35:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:39:24.30 ID:rVNZ4GiQo
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水滴が涙のようにこぼれおちるほど結露しきった電車の窓。そこから見える外の景色は灰白色の曇り空と、無音で降りしきる粉雪の世界。今日もまた町には雪が降っていた。
車内は強めの暖房が効いていてとても暖かく、学校から駅に向かう間冷えついてしまった私の身体も徐々に回復してくる。乗客の数はそこまで多くなく、ゆったりと座れたのは少し久しぶりかもしれなかった。
いつもなら、こうしてちょっとでも座れた時は借りていた小説を読み進めていた。しかしあの日からずっと私の身体は無気力感にさいなまれ続けており、どこに焦点を合わせるでもなくただぼんやりとした空虚を見つめることしかできなかった。
電車が駅に停車する。乗客が少し多めに出て行った。そしてその数と同じくらいの人がまた乗り込んでくる。みんな速やかに手ごろな席を探して座っていく。
扉が閉まり、電車が動き出す。私の身体も少し揺れる。徐々にスピードが上がっていき、安定した速度で走る。私の家がある駅は、まだまだ先。
そのとき、ふいに肩に何かの感触があった。虚ろな目をしていた私ははっとなって意識を取り戻し、隣の人に肩をぽんぽん叩かれていることに気づく。
一体なんだろう……そう思いながら振り向いた私の頬に、何か温かいものがつんと刺さった。
「…………」
「……ふふっ」
……人差し指だけをぴんと伸ばした手で肩を叩かれたので、振り向いた私の頬にその人の指が刺さったのだ。誰かをからかう手段としてはとてもメジャーであろう、学校などでよく用いられる手法。
いきなりこんなことをしてくる人は私の周りにはほとんどいない。何よりこれを過去一番私にしてきたあの人は……今は電車通学ではないのだから。
だがそんないたずらをする人がまだもう一人いた。この人の姿を直接見るのはどれくらいぶりだろうか……
私の隣にいたのは、撫子さんだった。
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