8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:16:53.40 ID:rVNZ4GiQo
「もう二月だねぇ」
「ええ、寒いですわね」
「雪もまだ溶けないの」
「春あたりまで残るかもしれませんわね……楓、先にお風呂入っちゃいます?」
「うんっ、でも……ちょっとおなか減っちゃったの」
「あら。じゃあおやつでも探しましょうか? 私も少し欲しいかなと思ってたところですわ」
「やったぁ♪」
ランドセルを置きにいった楓を見送り、私は台所のおやつ事情を確かめた。
買い置きしてあるものはあまりなく……少し落ち込んだ今の私に元気をくれるような甘いお菓子は見当たらなかった。階段を降りてきた楓が同じようにして戸棚を覗き込み、「ん〜……」と少し残念そうに首をかしげた。
「どうしましょう……なにか温かいものは淹れようと思ったけど、それだけじゃ物足りませんわよね」
「おねえちゃん、今日はいそがしい?」
「いえ、そんなことはありませんけど……」
「じゃあ、一緒におかしつくりたいの!」
楓がもじもじしながら、どこか恥ずかしそうに戸棚から新しい薄力粉の袋を取り出した。
「あ……」
「今からでもできそうなお手軽なやつで……おねえちゃんが得意なお菓子といえば?」
「ふふ……クッキー?」
「せいかいなの♪ 楓も一緒に作り方教わりたいの!」
「わかりましたわ。それじゃあ久しぶりに作りましょう」
嬉しそうにしている楓から袋を受け取り、クッキー作りの準備を始める。昔に比べると家でお菓子を作る頻度は減っていたため、久しぶりだという気持ちだけで少し高揚感が得られた。
お菓子作りは食べるときだけじゃない、作るときから楽しいものだ。
「いっぱいつくって、櫻子おねえちゃんにもあげるの!」
「ええ、そうし……」
楓が言った何気ない一言に、はっとなった。
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