3: ◆Freege5emM[saga]
2015/09/07(月) 03:05:40.29 ID:DhP+ihnQo
●【クローバー】
※緒方智絵里
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幸運の象徴である四つ葉のクローバーが嫌いという方は、まず居ないと思います。
うちの事務所ですと、朋ちゃんとか、ほたるちゃんが、よく四つ葉のクローバーを持ってます。
ですが、わたしのように、四つ葉のクローバーを探すのが趣味とまでいくと……
変わってるね、なんて言われることもあります。
ただ、四つ葉のクローバーには色々と素敵な意味があって……
わたしにとっても、特別な思い出のあるものなんです。
今日は、その内の一つをお話させていただければ、と……。
●
わたしが、アイドルとしてデビューする前の……養成所でレッスンを受けていた頃の話です。
アイドルになろうと思った理由……ですか。
それが実は、けっこう中途半端で……
わたしは、自分がおどおどとしてたり、子供っぽいところとか、そんなところが嫌で……
そこをスカウトさんに丸め込まれて……アイドルになれれば、自分を変えられるんじゃないか、
と思って、候補生として養成所に通っていました。
けれども、そんな状態ですから、うまくいくはずがなくて……
わたし、声が小さくて、歌や演技が全然伝わらなかったり、体力もなかったり、
ほかの候補生の人と自分を比べて、もともと乏しかった自信を、すっかり失くしてしまったんです。
あまりに自分が情けなくて、でも自分が言い出したことだから、
誰かに泣き言も漏らせず……一人で泣いてしまうこともありました。
それが、無性に寂しくて、辛くて……
そんな調子ですから、レッスンへ向かう足取りも日に日に重くなり……それでも、
自分を変えたい、という気持ちで……なんとか養成所へ通うことを続けていたんですが……
ある日、その気力がふっつりと……前触れもなく尽きて、足が動かなくなってしまったんです。
それは本当に突然でした……わたしの足が止まったのは、
養成所とその最寄り駅の途中にある公園でした。
なんとか、行かなきゃと思ってても……
電車を降りるまでは動いてたはずの足が、動かなくて……
わたしは……公園のベンチに座り込むのが、やっとの状態でした。
どれほど時間が経ったのでしょうか……ベンチで打ちひしがれていたわたしに、
誰かが呼びかけてくる声が聞こえてきました。
「――智絵里さん、緒方智絵里さんですね?」
「……えっ、あ……は、はい……っ」
いきなり自分の名前を呼ばれて、わたしがびっくりして顔を上げると……
編みこんだブロンドをウィンプルで覆った若いシスターさんが、しゃがみこんでわたしを見ていて、
至近距離で視線が合ったものだから、声らしい声が出ませんでした……。
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