過去ログ - モバP｢佐久間まゆの祝歌｣ -SS速報VIP

過去ログ - モバP｢佐久間まゆの祝歌｣

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1:まゆ、誕生日おめでとう[saga]
2015/09/07(月) 19:46:44.10 ID:ouqeXjEwo
アイドルマスターシンデレラガールズ、佐久間まゆのSSです。

地の文、オリジナル設定、R-15などの要素を含みますので、苦手な方はお手数ですがブラウザバックの方をお願いします。

SSWiki : ss.vip2ch.com

2: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:48:23.85 ID:ouqeXjEwo
どうやら、頭を打ったらしい。
いやいや、もちろんこれは比喩だ。
例え話の一つ。
つまりは、佐久間まゆという少女に初めて出会った時。

3: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:49:23.08 ID:ouqeXjEwo
まゆと連絡がつかない。
それだけで一大事だった。
いつもは電話をかければワンコール以内、メッセージを送ろうものなら遅くとも一分以内に反応が返ってくると言うのに。
こちらから連絡せずとも、5分おきには何かしらの短いメッセージが飛んで来る。
それに短く返信しながら仕事をするのが決まりごとのようになっていたのだが、もうかれこれ半日ほどなしのつぶて

4: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:49:57.07 ID:ouqeXjEwo
そのまま隣の椅子へ腰を下ろしながら、ちひろさんが続けて問いかけてくる。
言ってもいいものか、と一瞬迷ってから、改めて口を開く。
一人で悶々とし続けるよりはよほど健全だろう。

｢その、昨日の夜からまゆと連絡が付かなくて｣

5: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:50:27.51 ID:ouqeXjEwo
｢夏休みを使って、帰省ですか？｣

｢ええ、ホントなら俺も一緒に行くはずだったんですが｣

どうしても日程が一日合わず、まゆには先に帰ってもらうことになったのだ。

6: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:50:55.70 ID:ouqeXjEwo
｢──ッ！｣

｢Pさん？｣

立ち上がって、携帯の画面をちひろさんへ突き出す。

7: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:52:20.54 ID:ouqeXjEwo
｢何がプロデューサーだっ！　うちの娘をたぶらかしおって！｣

｢いえ、ですからその──｣

｢そんな事をさせるために東京へやったんじゃない！　とにかく、娘は渡さんからな！｣

8: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:52:49.84 ID:ouqeXjEwo
｢……親御さん、特にお父さんがだいぶご立腹のようでして｣

｢まあ、そうでしょうね……｣

大きなため息が聞こえたのは間違いなく気のせいではないだろう。

9: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:53:29.15 ID:ouqeXjEwo
｢で、ここ二日の成果はどうだったんですか｣

｢全然ダメです｣

｢はぁ……｣

10: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:53:59.00 ID:ouqeXjEwo
よろしくお願いします、と言い置いて携帯をしまい込む。
ベンチ代わりに腰掛けていた階段から腰を上げ、ぐっと全身を伸ばす。
そのせいか、目の端をちらりと掠めた栗色に反応するのが少し遅れた。

｢まゆ！？｣

11: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:54:25.43 ID:ouqeXjEwo
｢さ、佐久間まゆという子を、ご存知ではないですか……あいたたたた！？｣

｢……どうしてまゆちゃんの事を？｣

｢お、私は彼女のプロデューサーです｣

12: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:54:56.61 ID:ouqeXjEwo
｢大変失礼しました……｣

｢いいんですよ、こちらこそ乱暴な事をしてしまってごめんなさい｣

｢いえ、よく考えれば……というより、考えるまでもなく非常識なのは私ですので｣

13: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:55:31.87 ID:ouqeXjEwo
何か違和感があった気もするが、これも追及するのはやめておこう。

｢うふ、まゆちゃんとはいい仲なんでしょう？｣

｢も、申し訳ありません。　ご両親の信頼を裏切るような形になってしまって……｣

14: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:55:59.48 ID:ouqeXjEwo
失礼かもしれないが、断ち切るように強い否定をぶつけてしまった。
まゆを裏切るなんて、そんな事。
考えたことも無かった。
まずかったか、と顔色を窺うも、まゆのお母さんはますます笑みを深める。

15: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:56:37.84 ID:ouqeXjEwo
｢これじゃまるっきりコソ泥だよ……全く｣

月明かりも雲で隠れ、薄暗く更けた夜。
植え込みを乗り越えつつ、声を抑えてぼやく。
なにしろ今はまゆの家へ乗り込む最中だ。

16: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:58:00.69 ID:ouqeXjEwo
どうにかベランダまで辿りついた辺りで、びきりと嫌な音が響く。
慌てて手を離すと、その衝撃で完全にパイプが外れてしまったようだ。
どうにか目標の一つを達成した事に胸を撫で下ろし、明かりが薄く漏れる窓へと向き直る。

｢まゆ……｣

17: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:58:28.46 ID:ouqeXjEwo
ゆっくりと、雲が晴れていく。
今まで翳っていた月光が照らしたその姿は、とても。

ああ。

18: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:59:03.15 ID:ouqeXjEwo
どれくらい、そうしていただろう。
何も言わずに抱き合っていた俺達は、家の中から聞こえる物音でハッと我に返った。

｢なんだ今の音は……まゆ！どうした！｣

19: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 19:59:32.87 ID:ouqeXjEwo
｢貴様……！｣

｢お嬢さんを、僕に下さい！｣

言うが早いか、振り向かずに駆け出す。

20: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 20:00:20.32 ID:ouqeXjEwo
｢……さん｣

｢ん、うぅ……｣

｢朝ですよぉ、起きてください？｣

21: ◆klx9zSJI.g[saga]
2015/09/07(月) 20:02:02.40 ID:ouqeXjEwo
｢……Pさんの味｣

ぺろ、と唇の端を舐めるまゆ。
その紅が、やけに目を引いた。
目だけではなく、理性すらも奪われたと気づいた時には、もう遅い。

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