19:名無しNIPPER[saga]
2015/09/20(日) 20:30:38.05 ID:Kyx4mTJao
@檸檬
呆とした不安と焦燥を感じることはままあることではあったが、今回のばかりはいけなかった。
何がいけないのだというのでもなく、ただぼんやりと為したことの意味などを考えてしまい、結果自分そのものが不要であるかのような、そんなものがのし掛かってくるのだ。
こうなるともう手がつけられず、部活になど行ってどうなるものでもないとの有り様ではあるが、今日は大切な話し合いがあるからできる限り出席を、との菫さんの言葉を思い出し、自分なんかが出てもと卑屈なものが浮かんでくるが、不承不承身支度を整え家を出ることとした。
頭を垂れて憂鬱な通学をしていると、行き掛けの青果店の店頭にレモンが並んでいるのが目に入った。
手に取り、本屋で檸檬爆弾が破裂する様を夢想すれば気が晴れるのだろうか、などと思ったが、そんなものでは到底この鬱屈したものは去りそうもない。
結果として、手に取ったのならば、といたずらに小遣いを減らすだけとなった。
部室について、誰と話すでもなくレモンを掌で転がす。
転がって落ちそうで落ちないこのレモンは、きっと僕の不安と焦燥なのだ。
このまま何にもならず、ただぐずぐずと腐って、汚ならしい染みを残すのだろう。
そんなどうしようもないことを考えていると、菫さんが部室に入ってきた。
しばらくするとこちらに近づいてきて、「そのレモンはどうしたんだ?」などと聞いてくる。
道すがら買ったのです
「食べるのか?」
いえ、特に、何するともなく買ったのです
「なら貸してみろ。蜂蜜漬けにしてきてやろう。元気が出るぞ」
その言葉に先程のどうしようもない考えが頭を過り、可笑しさが込み上げてきた。
この人は、僕の不安と焦燥をどうすると言った?
食べるのですか、このレモンを?
僕の問い掛けに、当たり前だろうと頷く菫さんに、堪らずとうとう吹き出して、大笑いとなってしまった。
きょとんとする菫さんを見て、きっと彼女の作る檸檬の蜂蜜漬けが、僕にとっての檸檬爆弾だったのだろうと、なお笑い転げた。
90Res/59.59 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。