過去ログ - 朝日奈葵「苗木ととれーにんぐ!」
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12:名無しNIPPER[saga]
2015/09/27(日) 23:32:30.18 ID:TJEoPB8O0
マズイと思った。
小芝居だと、何度も自分に言い聞かせる。
これは演技で、シュミレーションで、本気になってはいけないと。
気の迷いを捨てようとして惑わせていた視線が、彼女の唇に重なったまさにその時、蕾が綻ぶように。
『どうすれば――いいんですか』
月並みな表現だけど――ボクは呆然となった。
打ち合わせでは、ボクが散々思わせぶりなことを言って、朝日奈さんは動揺しているのを表に出さないようにするという筋だった。
だから彼女がこんな発言をするとは思っておらず、ボクは完全に虚を突かれて、思わず聞き返しそうだった。
その声音は、緊張の果てに搾り出されて、問いというよりもどこか諦めじみていた。
両腕は胸を守るように交差していたが、その実、豊かな身体のラインを強調するだけだった。
仄濡れた上目遣いは、僅かな抵抗の意思と、それが叶わないことを予め覚悟しているかのような羞恥に満ちていた。
まるでこれから起こるすべてを受け容れるというような――後ろめたい隙。
その発露が収束し、弾丸となって――ボクの理性を撃ち抜く。
知らなかったなら、我慢できたのかもしれない。ボクが女の子を知る前なら――それは知らないまま、手の届かないものとして、目を背けることができたのかもしれない。
でもボクは、知ってしまっていた。
『アレ』はとってもやわらかくて、『ソレ』はとっても熱くて――そして、女の子によって、全然違うんだって。
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