過去ログ - ?「咲が好きなのは私!」咲「ふえ?」
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以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]
2016/01/07(木) 12:59:42.13 ID:XN0SjkYlO
もし、彼女が臨海に入学していなかったらどうなってたでしょう。
都内の街中を滑るように歩きながら私は考える。
今年……いえ、新年を迎えた今となっては去年ですか。
去年の四月、彼女は唐突に私たちの前にあらわれた。
宮永咲。日本のインターハイチャンピオンと名高いあの宮永照の妹。
入部当日、智葉をはじめとするその場の全員に対して切った彼女の啖呵は忘れられない。
『臨海女子一年、宮永咲。入部を希望すると同時に、団体戦先鋒のレギュラーオーダーを希望します』
あれから……色んなことがあった。入部当日は留学生四人で彼女の鼻っ柱を折ろうとして失敗したり、その後、道案内を買って出た私は彼女に言い知れない危うさを感じたり。
四月のこと、五月のこと、六月のこと……夏のインターハイもあった。言い出したらきりがない。
だから、割愛します。ごめんなさい。
それに目的地に着いてしまったんですから、もうこれ以上過去の思い出話にばかり浸るわけにもいかないですし。
「あっ……明華さん、来てくれたんですね」
そう言ったのは、歩いていく先、数歩程度の距離を空けたところに佇んでいる茶髪の少女。
「私、すっぽかすと思われてたんですか?」
「え、……あっ、そういう意味じゃなくて!」
「信用ないんですね。傷つきました」
「ぐすん」などとわざとらしい効果音を棒読みしてみると、それさえ、目の前にいる少女には罪悪感を刺激する材料となったらしく、あわあわと目を回す。
「あ、あ……違うんです、来てくれたのが嬉しくて。それで」
「知ってますよ」
最初から、といつも通りの微笑を湛えながら付け足す。というか、傷ついたふりをしていたときですら微笑みを浮かべてたのですが。彼女は疑うということを知らないようです。
「……もしかして、私からかわれてます?」
「おや、鋭くなりましたね。智葉に散々からかわれた賜物じゃないですか」
「も、もう! からかうのはやめてください!」
彼女はほんのりと顔を赤らめて怒った風に語気を強くする。
けれど、私は知っていました。彼女はこれっぽっちも怒っていない……その振舞いは単なるポーズなのだと。
「散々いじり回してくるのは先輩だけで十分ですよ……」
しかし感傷的になっていた私は、彼女がふとこぼした言葉に戦慄します。
「さ、咲さん……まさか智葉のイジメがくせになっ」
「なっ、違います違います違います! そんなことあるわけありません!」
最後まで言わせてももらえませんでした。
「あ、あれは私が最初にまぎらわしいことしたから……だから、甘んじて受けちゃいけなくてっ、構ってもらえて嬉しいとかそういうのじゃないんですからね!?」
先ほどより遥かに赤く頬を染めて、言い訳めいた言葉を重ねてくる。まるで癇癪を起こした猫のようです。彼女は、こんな顔をめったに見せない。こんな公衆の面前であれば尚更に。
通りがかっていく人の視線がちらちらと向いていたが、激昂している彼女には意識に入らないようだ。おそらく、後々気づいて悶えるはめになるんでしょうけど。
「それはそうと咲さん」
「はーっ、はーっ、……な、何でしょう?」
「買い物、いきましょうか」
「……へっ」
彼女が呆然とします。なんと口が半開き。貴重な表情が見られた気がします。
「七草がゆと、追加のお雑煮とかの材料買いにいくんですよね?」
たしか、そういう理由で買い物に誘われたと記憶している。臨海の面々は大食らい、というか咲さんの料理ならいくらでも食べてしまうところがあるから、せがまれて作ることになる咲さんはかなり苦労してそうです。せめて雑用は手伝ってあげましょう。私も食べたいし。
「あ……は、はい、そうでした。よろしくお願いします」
ぺっこりん。そんな効果音が聞こえてきそうな感じに頭を下げてくる。昔……といっても数ヵ月ほど前ですが、その頃と比べると頭の下げ方ひとつとっても違います。昔はなんというか、もっと慇懃で、他人行儀な感じでした。
ほんとうに打ち解けてくれたんですね……しみじみと感慨がわき上がってきます。
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