33:名無しNIPPER[saga]
2015/09/30(水) 05:26:59.80 ID:Csg2FCKN0
「神様―― この度は本当にありがとうございました」
どうしてこうなった。
危ない美女に強引に連れられて辿り着いた先は―― 寂れた雑居ビルの二階だった。
どんな禍々しい宗教施設に連れて行かれるのかと思っていたら、ただの寂れた雑居ビル。
位置的には…… 駅で言えば山手線の新宿と新大久保の間くらいだろうか。俺の方向感覚が正しければ、そのはずだ。
大通りから外れた怪しげな路地、その一角に佇む雑居ビルの二階へ連れられて。
建物の中は一見すると寂れた探偵事務所のような、そんな印象を受ける埃っぽい室内であった。
そうしてそこへ連れられた俺を待っていたのは――
「神様、ここへお座り下さい……」
「そ、粗茶ですがどうぞ!!」
もう一人の女だった。
「こ、この度は私の部下を助けていただいて……」
理解不能、混乱、錯綜。
通されるがまま埃っぽいソファーに座らされ、お茶まで出されて。
そして石像になる俺の傍らで片膝を立ててしゃがみ込む女が二人。
例えるならば…… 騎士が主君とか姫君にするような、あんなポーズだ。
一人はここへ連れて来たストロベリーブロンドの女で、もう一人が――
艶のある長い黒髪と妖艶な美貌、モデルのような体つき。珠のような肌と、爛々と光る淡い赤の瞳。上下は黒のスーツをピシっと着込んでいる……
連れられて来ると、事務所にはそんな姿をした女がいたのだ。
「なんとお礼をしたらよいか――」
一体どういうことなんでしょうか。
俺はいつの間に神様になったんだ?
ふざけているわけではない…… 二人とも至極真面目な表情で俺からの言葉を待っている。
掛けるべき言葉の候補が浮かんでは消え、浮かんでは消え―― 一体俺にどうしろと。
「あのさ――」
「何でしょうか!?」
しばしの沈黙…… 覚悟を決める。
「俺、神様じゃないから!!」
誤解を解かねばなるまい。
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