過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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974: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2016/02/25(木) 22:51:22.81 ID:/mUgx/Fs0
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 力強く蹴りあげた敵に止めを刺して、カムイは一気に反転する。迫りくるギュンターに気付いたからだ。
 一人馬を駆っているが、翻弄するのではなくカムイだけに的を絞った攻撃は、出現させた木偶が倒される合間を縫うように加えられていく。波状攻撃の様相を呈していた。
 火花が散る度に照らされるギュンターの表情は真剣そのものであり、先ほどまでの合間憎悪に滲んでいたものとはまったくの別物だった。

「カムイ様から、離れてください!」
「ふっ、そんな魔法で私を倒せるとでも?」
「関係ありません。カムイ様から引き剥がせるのなら!」

 リリスの魔法により進路変更せざるを得ない状況になっても、その馬術は匠であり木偶の頭上を軽々しく飛んでみせると、そのままの勢いをもった大槍をカムイへと振り下ろす。向かってきた木偶を仕留めるために放とうとした剣先であったが、ギュンターの行動変化を読み取って距離を取ることに切り替える。すると先ほどまでいた場所、ちょうど頭があった部分を大槍が通過した。

「……本当によく動きますね。気づかなければ頭が飛んでましたよ」
「老体と甘く見られては困りますな。これでも若い者に負けるつもりはありませんので」

 着地と同時に振り下ろした大槍を引き寄せつつ、もう一歩前に踏み出せば、またしてもギュンターの攻撃範囲にカムイの体がすっぽりと入る。それを踏まえてカムイは敵の一体を掴み上げ、そのままギュンターに向かって蹴り飛ばし、すかさずその陰に隠れて距離を狭めた。
 無論、ギュンターにとって彼らは木偶である。刺し殺すことも容易いが、そうして槍を振るわせようというカムイの算段には気づいている。となればと、手綱に力をこめて馬へ跳ぶように指示を出せば、馬はカムイの頭上を越えるように高く跳躍し、ちょうど真上に差し掛かるあたりで大槍が真下へと振るわれた。
 隠れていた視界の端に映った影から視線をあげたカムイの目の前を横切る槍先は、寸でのところで足を止めたカムイの眼前を掠め、少しだけ毛先を奪い去っていった。

「やはり、現役の頃のようにはいかないようだ」

 そう零すギュンターの顔には余裕がある。一方のカムイにはその余裕がなかった、さすがに一対一でギュンターに勝てるとは思っていなかったが、その差を思った以上に見せつけられる。こちらの選んだ行動に対して、ギュンターは的確に対処してくる。それに加えて老体とは思えない体力も、その強さに花を添えていた。
 床に足が付いたと同時に馬が反転し、そのままの勢いで振り返ったギュンターの一撃がカムイの背中に向かって差し込まれるが、それをカムイは避けて瞬時に振り替えると、ギュンターの槍が先ほどカムイの前にいた木偶を貫いていた。槍先が死体に納まっている今がチャンスだと、手に持った終夜を握りしめて飛びこもうとした瞬間だった。
 力強い風切りの音と共に脇腹に恐ろしい激痛が走る。死ぬとまではいかないまでも、その突然の攻撃に呼吸が一瞬止まり、両足に入れて蹴り込んだ勢いが真横に向けて放出されるように、彼女の体は床へと叩きつけられる。凄まじい衝撃に止まった呼吸の再開に体が務める反面、何が起きたのかを理解するためにギュンターを見やれば、馬が一回りを終えたところであった。

「ふん、まだまだですな」

 その言葉とともに大槍が振られ、槍先に刺さっていた木偶がズルリと床へと落ちる。その古めかしい大槍の槍先より少し下の腹に真新しい傷があった。空振りの直後にギュンターが馬に指示を出してそのまま槍の腹でカムイを吹っ飛ばした証であった。
 遠心力の加わった一撃はカムイのペースを乱すには十分で、この気を逃さないようにと手綱が音を上げる。死の宣告ともいえるその音と共に馬が駆けだそうとした瞬間に、ギュンターの進行方向に向けて幾つもの火球が花を咲かせた、青き衣がカムイの前に現れた。


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