過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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◆P2J2qxwRPm2A
[saga]
2016/02/25(木) 23:23:33.61 ID:/mUgx/Fs0
◇◆◇◆◇
ギュンターの馬が駆け出してカムイへと肉薄していく。手に携えた槍は確かな殺意を持っているが、それはカムイを殺す確かな意思を持っていないと自ずと理解できていた。だからこそ、違う光景が浮かびあがってくる。ギュンターは力強く馬で野を駈けていた。
どこに向かう道なのかを彼は知っている。妻子を殺した正規兵たちの返り血を落とすこともなく、ギュンターは馬を駆る。王城に向かい、鬼の形相で迫るギュンターはガロン王の行方を訪ねて回り、大臣からその行き先を告げられ、彼は急いでそこに向かった。ギュンターにとっての故郷と呼べる村へ。
迫るギュンターとカムイの距離。そんなカムイの後続から二つの影が後を追う。手に持った暗器の輝きと伝染する氷の冷たさをもろともせずに、彼女たちはカムイに迫りくるギュンターの馬を見据えた。
「フローラさん、フェリシアさん!」
「はい、カムイ様! フェリシア、準備はいい?」
「任せてください、大丈夫ドジなんてしませんから」
「……ふふっ、戦闘技術はあなたのほうが上なんだから、もっと自信を持ちなさい、フェリシア」
「はい、えへへ、姉さんに褒めてもらえました。行きますよ、ギュンターさん!」
カムイの後方左右に二人が広がり、その手に持つ獲物を構えて一気に前に出ると、スカート下からさらにもう二本の暗器を取り出し一斉に放出する。幾つもの暗器は黒き線となってギュンターの馬めがけて飛翔する。やがてその大半をギュンターは避けることなく馬に命中し、彼の体は静かに放り出された。
(……あの時も、そうだったな)
落馬した視線の先、記憶の中の故郷はすでに炎に包まれていた。村人の悲鳴も無く、あるのは平積みにされた遺体とそれを見て笑うガロンの姿だけだった。炎に照らされるガロンは愉悦に満ちた表情で、遅れてやってきたギュンターに対しても機嫌の良い声を出していた。
そして、それがガロンにギュンターが斬り掛った瞬間だった。妻子と故郷を失ったことでギュンターの精神は崩れ、やがて使い古した大槍はガロンを殺すための凶器となるも、その怒りが成就することはなかった。
落馬した影響からか、それとも憎悪がそれを見せつけるためにギュンターの体を切り刻むのか、顔の傷が開きギュンターの顔を赤く染める。ガロン王に返り討ちに会い、負うことになった傷跡だ。その傷跡から流れ出た血が右目に混じり始め、視界が染まっていくのを見ながらもギュンターは全く違うことを思い出していた。
断片的に連なる記憶は、今馬を倒した二人の使用人の記憶だった。
『フリージアから参りました。フローラです』
『あ、あの、おな、同じくフリージアから参りました。フェ、フェリシア、です。そ、その、よろしくおねがいしましゅ』
『フェリシア、噛んでるわよ』
『ご、ごめんなさいぃ』
『……お前たち、一つだけ聞いておきたいことがある』
『はい、なんでしょうか?』
『お前達がここに来たのはそう言われたからか、それとも故郷のためか?』
初めて二人と出会った時の記憶、二人が城塞にやってきた理由はすぐに理解できた。部族の反乱の話がいくつも上がっていた頃、その抑止力として幾人もの部族の令嬢が召集されていたからだ。
そして、その中で城塞の任に当てられたのが、氷の部族フリージアの双子の娘たちだった。
フローラもフェリシアも自分がここにいる意味を少なからず知っていた。そして、この先どうなるかわからないということも、ギュンターの質問にどう答えればいいのか、フローラは考えていたことだろう。
『故郷の皆のためです』
だからだろう、フェリシアがすぐさま出した答えを聞いてフローラの顔は強張っていた。だけど、フェリシアは言葉を止めなかった。
『私、すごいドジで、村の皆を困らせてばっかりで……。だけど、そんな私でも村のためになることできるってそう思ったから、私はここに来たんです。それに姉さんも一緒だから怖くなんてありません」
『フェリシア……。私も故郷のためにここにいます。誤魔化すつもりはありません。これで満足ですか?』
二人の目はとても強いものだった。それは覚えている。聞くだけ聞いたのだから、言いたいことがあれば言えばいいとそのフローラの目は語っていた。
だからこそ、ギュンターは二人の面倒をちゃんと見ることに決めた。この二人に己が味わったような悲劇が訪れないようにと願いながら。
『その気持ち、努々忘れぬことだ。では、来なさい。主であるカムイ様がお待ちだ』
『はい』
『よ、よろしくおおお、おねがいしますー!』
(……フェリシア、フローラ。ふっ、あの頃の固い態度が懐かしいものだ)
視界の朱色を拭うことなく受け身を取り、すぐさま態勢を立て直したギュンターは、迫りくるカムイに向けて盾と大槍を構える。強烈なシールドバッシュで攻め入るも、それをカムイは避け切り、すぐさまギュンターの背後へと回り、その視線を追い掛けたところで視界の端に影が一つ映った。
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