過去ログ - 【咲-Saki-】京太郎「みやながけ」咲「京咲!」
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10: ◆Y.lj54HWGU[sage saga]
2015/10/05(月) 14:39:54.49 ID:4Bms6Ic4o

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 「すごく、怖かったんだよ?」

 きっと、これが俺の知っている宮永咲。

 他の人たちが通り過ぎるだけで腰を抜かすような存在じゃない。

 ちんちくりんで、ぽんこつで、優しくて、人見知りの宮永咲。

 対局相手は、咲のそういった部分を知らないんだ。


 「部長念願の団体戦出場なのに、私が大将。

  負けたら部長の夢が壊れちゃうって立場にいたのに、私はそんなこと考えてる余裕がなかった」

 「私にとってこの大会は、もう一度、言葉でなくてもお姉ちゃんと語れるかもしれないっていう大会」

 「これを逃したら、もうお姉ちゃんと会えなくなってしまう気がして」


 誰も知らない咲の本心。俺だけが知っている宮永咲。


 「全国から、お姉ちゃんに会うためには一戦も負けられなかった」

 「どんなに努力してきた人たちも関係なかった。全部倒す、それだけ考えてきたんだ。」

 「でも、団体戦のメンバーで、私とお姉ちゃんは打てなかった」


 周りにたくさんの人がいるのに、場が静寂する。

 まるでこの空間だけ、時が止まってしまったかのように。


 「今まで「お姉ちゃんと戦う」で誤魔化していた部分がドッと出てきてね。すごく焦った。

  それでも、勝たなきゃ、勝たなきゃ、部長のために勝たなきゃって、麻雀を楽しむことより、勝ちに拘っちゃった」

 「ここまで走り抜けてきた。でも後ろには何もなかったんだ。

  頑張った練習、みんなとの絆、他のチームは鬼気迫る勢いで来るのに、この瞬間の私には何もなくなっちゃった」

 「無理して最後の嶺上開花。でも、裏ドラが乗らないことはわかってた」

 『だから手を途中で止めた』

 「もう楽になりたい、って感じの一打だったんだけどね。負けちゃった」


 「咲……」

 「うん、ちょっと待って。

  もうちょっといいかな?」

 「ああ、いくらでも聞くぞ」


 「でも、そんなことより、対戦相手の努力が伝わってきたのが一番辛い。

  みんな、何年も、何年も麻雀をうってきてた。

  一瞬のために、全てをかけて倒れた人だっていた。

  ……本当は、私が居るべき場所じゃないんだな、って思ったよ」

 「なんで私が家族に怒られたのか、お姉ちゃんに怒られたのか、和ちゃんに怒られたのか、今更分かっちゃった」

 「お姉ちゃんに会うために来た、ってのは、違ったんだね」

 「私は団体戦の最後に負けた時、負けて悔しいなとは思っても、それだけ。

  優勝を逃して泣いているみんなの前に、出られないでしょ」


 長い年数をかけてきたものならばそれが自信になる。

 全国大会の咲は一枚の薄いガラスのような精神で綱渡りをしてきていた。

 だから最後、『努力をしてきたもの』に負けて安堵したのだ。



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