11: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:37:08.64 ID:jcjK0Bse0
わたしの中の、ありったけの勇気を振り絞って。
わたしは、砂糖菓子の弾丸を撃ちました。
それはきっと、誰に当たるということも、何かを壊すということもないけれど……
そんな勇気がわたしの中にあったという事実だけで、わたしにとっては十分でした。
12: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:37:40.52 ID:jcjK0Bse0
だから……
二次審査、オーディションの開催日時を知らせる手紙がわたし宛に届いた時、わたしはとてもうろたえました。
13: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:39:23.74 ID:jcjK0Bse0
「わたし、きっとここに来るべきじゃなかったんです」
そう言って、わたしは顔を伏せます。
人混みはもともと、こわくて苦手だったけど……
それ以上に、わたしに分不相応な場所のように思えて。
14: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:40:25.36 ID:jcjK0Bse0
きっと、何かの勘違いだったんだ。
そう思って、引き返して家に帰ろうとしたわたしを、あなたは呼び止めました。
混乱するわたしを落ち着かせて。
15: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:41:39.73 ID:jcjK0Bse0
この人が、わたしを見て……
わたしの話を聞いてくれる、人生最後の人になる。
そう思って、背の高いあなたの顔をわたしは目に焼き付けます。
優しそうな人。
16: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:42:24.16 ID:jcjK0Bse0
君が望むのなら、君をアイドルにしてあげる、とあなたは言いました。
プロデューサーをやっているのだ。
君の応募書類を見て、オーディションを楽しみにしていたのだ、と。
17: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:43:21.15 ID:jcjK0Bse0
わたしは、幸せなんか望んじゃいけなくて。
幸せになった分だけ、きっとそれ以上の悲しい不幸が待っているから。
今日ここに来なければ。
18: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:44:21.44 ID:jcjK0Bse0
もう一度だけ、あなたの顔を見ます。あなたの顔色を、伺います。
あなたは優しく笑って、智絵里ちゃん、と言って頷きました。
きっとわたし、あなたをいっぱい失望させてしまいます。
19: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:44:47.79 ID:jcjK0Bse0
「緒方……緒方智絵里……です。その……がんばります、ので……えと……見捨てないでくれると……うれしい、です」
20: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2015/10/11(日) 02:46:25.04 ID:jcjK0Bse0
おしまい。
21:名無しNIPPER[sage]
2015/10/11(日) 03:05:28.13 ID:o2yx3nd7o
乙。
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