9:名無しNIPPER[saga]
2015/10/12(月) 23:05:40.77 ID:Lch4ddxp0
「アイドルの引退っていろいろあるだろ。年齢、結婚、まあ良くはないが、不祥事。
中には引退を宣言しないまま消えていく人もいるし、タレントや女優に転身する人もいるよな」
モバPの言葉に、美波はうんとうなずいた。
「まあ、一番は消えていくのが多いかな。ツライ話だけど」
確かに、引退を宣言する芸能人は少ないかもしれないな、と美波は思う。
「まず、そんな終わり方はいやだなって思う。不祥事なんてもってのほか」
はい、と美波はうなずく
「引退って、ある種、最後の審判みたいなもんだよな」
「神様ではなく、多分、ファンの皆さんが審判されるんでしょうね」
「その通り。最後、引退をするとき、ファンにどう思われて去りたいか、それを考えるのが、俺らの終末論かな」
なるほど、と美波はつぶやき、考え込む。ファンにどう思われたいか……
「終わりって考えるから難しいんだと思う。こんな風に思われたいって、ある意味理想だろ?
なら、終わりじゃなくて、アイドルとしての目標を考えればいい」
「それなら、考えやすいかも」
うなずきながら美波は言った。
「俺の仕事は、美波の目標を達成させるために全力で協力すること。
それで、悔いなく最後までやりきらせることかな。これからも、二人三脚だ」
美波の目を見て、力強くモバPは言った。
やっぱりこの人がプロデューサーで良かった、そう美波は思いながら、よろしくお願いします、とぺこりと頭を下げた。
「うん、こちらこそ、よろしくな」
満足げに、そしてちょっとドヤ顔をしてモバPはこたえた。
むっとしたわけではないが、なんとなく意地悪をしたくなった美波は、立ち上がり、モバPの耳元でできるだけ意味深長に呟く。
「美波のこと、幸せにしてくださいね」
囁いた耳元が真っ赤になるのを確認して、美波は心の中でガッツポーズをした。
この人は人をからかうくせに、からかわれるのには弱いみたい。
アイドルとプロデューサー、どんな終末を私たちは迎えるんだろう。そして、その先はあるんだろうか、と美波は思う。
でも、まずは今週末、ライブにショッピングに食事、それを楽しもう、そう思いながら美波は部屋を後にした。
終わり
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