過去ログ - モバP「藤原肇と一緒にエレベーターに閉じ込められた」
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2: ◆agif0ROmyg[saga]
2015/10/16(金) 17:18:58.97 ID:zDmK2gQj0
 その日俺は、担当アイドルの藤原肇とともにオフを満喫していた。

 駅からほど近い、いわゆる複合商業施設に遊びに来ていたのだ。

 肇は真面目で一本気だが堅物というわけでもなく、久しぶりに二人で遊びに来られたことでとても喜んでくれていた。

 岡山出身の彼女は高層建築というものをあまり見慣れていなかったらしく、首都圏ならばさほど珍しくもないガラス張りのエレベーターにもずいぶん感激していた。

 普段暮らしている町並みを遙か眼下に見据え、上空からの視界になにかロマンチックなものを感じたりもしていて、普段は落ち着いた雰囲気を漂わす肇の年相応なところを見られたように思う。

 「密室になりがちなエレベーター内部を外から見えるようにして防犯効果を高める」

 という実利的な効用に言及すると頬を膨らませて不満を示してきたりして、16歳らしい可愛らしいところを惜しげもなく見せてくれる。

 最近お互い忙しくて、こうして仲良く話す機会もあまり取れなかったことを悔やみつつ、そっと手を取ると肇の顔が真っ赤になった。

 人目を忍んで逢瀬を重ね、既に深く愛し合う関係となった俺たちだが、未だに肇はしばしば、こういう初なところを垣間見せる。

 男の体温を感じて恥ずかしそうに顔を伏せながらも、ちらちらこっちを見てくる肇の仕草は、夜への期待を大いに煽るものだった。

「駄目ですよ、こんな……外で」

「誰も見てないよ。これだけ高く上ったら、下からも見えないだろう」

 エレベーターの中で二人きり、地上を何十メートルも離れたこの場所はいわば密室。

 勿論、エレベーターが目的地に止まれば扉が開いて他の客が入ってくるわけだが、それまでは俺たちだけの空間だ。

 もじもじしながら俺の手をきゅっと握っている肇。

 真面目で清楚な16歳が時折見せるこうした仕草は、まさか計算されたものではあるまいが、それゆえにかえって扇情的。

 二人の立場も忘れて思わず手を引っ張って抱きしめかけたとき、がたんと言う大きな音が響いた。

 続いて何か大きく重いものがぶつかるような鈍い音が二度、三度と続く。

 倒れかけた肇をかばってガラスに手を突く。

 揺れが収まったとき、既にエレベーターは停止していた。

「え……? こ、これは……?」

「なんか、事故かな。動いてないぞ。
 扉は……開かないか」

 フロアとフロアの間で急に止まったエレベーター。

 停電か何かだろうか、ボタンを押しても反応はなく、人力でドアをこじ開けられるはずもない。

「……まあ、そのうち復旧するだろう。おとなしく待っていよう」

「そ、そうですね……」

 こんな大きなビルのエレベーターがそう簡単に止まるとは考えにくい話だが、実際止まっているのだから仕方ない。

 外から見ても、中の様子は分からずとも中途半端な位置にエレベーターがあるのは一目瞭然なのだから、ビルの職員がすぐにでも対処してくれることだろう。

 最初は、そんな風に軽く考えていた。


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