19:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:38:07.18 ID:iHsws6qc0
世界存在の必然性が無の単一への収束に基づくというのなら、榛名の純愛と世界の存在はトレードオフの関係にあると言えた。榛名の純愛対象たる提督はもはや全ての状態属性を抽象された何者か『X』であり、それは何ものも含まない無であるべきだった。
もし『X』に何かがあるというなら、愛は所詮その何かを条件的に愛しているに過ぎない。榛名が純粋に提督を愛す時、それはもはや提督を愛していては純愛足り得なかった。提督の肉体、精神、環境、記憶、思い出といったあらゆる属性が欠落しようと反転しようと愛すること、それが榛名の決定した究極の純愛である。
しかし、榛名が愛する無は提督を抽象した後に残る空虚『X』ただ一つである。抽象すれば全ては無に帰すからといって、榛名の純愛が『X』以外のものにまで及ぶはずもない。純愛は一途であるものだからだ。
そのため、榛名にとって『X』が他の無と区別されなければならないのは当然であり、無の個体化こそ榛名の純愛を可能とする絶対的条件であった。榛名は己の純愛を貫くためになら、世界存在の必然性なんてものは放棄して構わなかった。いや、むしろ世界存在の必然性を否定するために世界が無に帰れば良いとさえ考えていた。
無の区別不可能性に基づいてその存在の必然が保証された世界が無化するということは、無が区別できることの証左となり榛名にはとても良いことのように思われた。榛名にとって世界の破滅こそ純愛への希望であった。
世界は「NO DATA」の黒色に押しつぶされ全てが無かったことになろうとしていた。榛名は大丈夫だった。純愛は全てを無かったことにしても生き続ける。むしろ、無の世界においてこそ純愛は最も輝く。提督と榛名を空虚にした後に残る『X』。全てを脱ぎ去り丸裸になった『X』。最も純粋な裸体『X』同士を重ね合わせることで卑俗な性を超越した彼岸にある最高のセックス、ただ純粋運命によって結ばれた純愛関係を目前にして榛名は全てを良しとした。
おわり
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