過去ログ - 提督「ドッキリで死んでみる」
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:01:10.29 ID:iHsws6qc0
だから、榛名の主観性に基づくなら、日常の始まり方は二種類ではなく、提督が執務室にいる場合の一種類だけである。すなわち提督は毎日しっかり執務室に出頭しており、榛名にしてみればそんな誠実で真面目な提督にある種の尊敬の念を抱いたりしていたのだった。

いかなる時間に赴こうとも執務室の席で書類を整理している提督、いつ休息をとっているのか不思議に思わないでもないが、敬愛すべき優しい提督に指示され仕事を片付けていく、そんな日常こそ榛名の持つ唯一の日常であった。しかし、いまや榛名は第二の異なった日常的始まりに遭遇していた。

「執務室に提督がいた場合」とは、なるほど確かにいつも通りの日常的始まり方だ。しかし、それは厳密に言い直せば「執務室に提督が生きて存在している場合」であり、「執務室で提督が死体としてある場合」は榛名の始まり方からは逸脱していた。

一体何をすれば良いのだろうか。指示はない。なぜなら死人に口はないからだ。生まれて初めて榛名は自己意志に基づいて行為せねばならなかった、それが現在の状況から要請される義務であった。

「榛名、優秀な秘書艦というものは一を知って十を知るようなものだ。提督の仕草や振る舞いや状況に応じて、自分で為すべきことを探さなければならない」

榛名は提督の言葉を頭の中で反芻して、再び状況を確認する。きっと、この状況こそ提督の命令に違いない。命令は口から出る言葉のみとは限らないのだ。水深のあるプールにいる状況なら、それは「泳げ」という命令であり、扇風機が回っている状況なら、それは「涼め」という命令であり、間宮アイスを目前とする状況なら、それは「食え」という命令なのだ。


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