過去ログ - 魔姫「捕まえてごらんなさい、色男」
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33: ◆WnJdwN8j0.[saga]
2015/10/30(金) 19:11:27.28 ID:7HeYyVmm0
猫耳「ありゃ、雨だ」
夕飯の支度をしていた猫耳は、窓の外を見て呟いた。
猫耳「雨ならパレードは中止かも。良かったね魔姫、降る前に帰ってきて」
魔姫「そうね」
猫耳「あ、魔姫、それ」
魔姫は祭りで買ったものを、箱から出して眺めていた。
猫耳「オルゴールだ。綺麗だね〜」
魔姫「見た目もいいけど、音楽もいいのよ」
猫耳「へぇ、鳴らしてもいい?」
魔姫「いいわよ」
猫耳はオルゴールのゼンマイを回す。
すると、聞き覚えのある音楽が流れ始めた。
猫耳「あ、これは…」
魔姫「私が子供の頃…お父様が歌ってくれた、子守唄よ」
魔王の声とオルゴールの音にギャップはあるが、それでも耳に馴染んだ優しいメロディは変わらない。
魔姫「作曲したのは人間だそうよ。お父様ったら、人間の作った歌を口ずさむなんてね」フフ
猫耳「僕も好きだよ、この音楽。…人間の文化って、いいものが沢山あるよね」
魔姫「そうよね」
父が討たれ、人間の社会に溶け込むようになってから、沢山の文化に触れてきた。
人間の街を歩いて、人間の作った服を着て、人間の作る料理を食べて、人間の書いた本を読んで…。
魔姫「人間と魔物の間で、もっと文化の交流をするべきだったのよ」
猫耳「そうだよね。魔物の文化だって、人間に馴染むものがあるよね」
魔物同士でも、人間同士でも、争いは起こる。
種族の壁というのは、実は些細な問題だったのではないか…と思うことがある。
魔姫「…両種族に足りなかったのは、歩み寄りだったのかもね。だって、歩み寄れば……」
互いの素晴らしい部分を知り、尊重し合うことができたかもしれない。
今、自分がこうしてオルゴールの音に聞き惚れているのと同じこと。人間の文化に触れて、魔姫は人間が好きになった。
魔姫「…時が遡るなら、お父様にそう言ってやりたかったわ」
猫耳「そうだねー」
2人はしばらくオルゴールのメロディを、繰り返し繰り返し聞いていた。
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