過去ログ - 速水厚志「ハッピーエンドを取り戻す」
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名無しNIPPER
[saga]
2015/10/31(土) 21:33:56.41 ID:08xPns3X0
九月十四日 午前十時 中国・広州湾
無人の港に停泊している大型強襲揚陸艇。
その甲板で、Tシャツとジーンズ姿の少女のように見える幻獣の王……巨大な軍産複合体と大量の幻獣軍勢を所持する、現在最大勢力の幻獣王ハニエルが、太い縄で縛られ、椅子に固定されていた。
家令であるボリスは、すぐそばで甲板上に転がり、身体のあちこちから血を流し這いつくばっている。
「き、きさ、ま……!」
ボリスは目を血走らせ、ハニエルの側に立つ男を睨む。
だが男はそれに無反応で、ただ黙々と働く船員たちを眺めていた。
既に船員らは、男による精神支配で、操り人形と化していた。
「ほぅ……精神支配が解かれたか。最前線の……ふん」
顔を歪め、椅子に固定されたハニエルを見下ろす。
「王族と言えど、所詮は逃げ延びただけの者。爆弾遊びと、この世界で得た玩具にすがるようでは、この程度か」
哀れむような、憎むような、いとおしむような、ちぐはぐに歪んだ表情で。
しかしハニエル側に何か応える余裕はなかった。
ハニエルの表情は、唾液と涙と鼻水を垂れ流し、目を見開いて浅く呼吸し続けるという、元の美貌が台無しの情けない限りとなっている。
男は、そんなハニエルの頭に、そっと、優しく手を乗せた。
途端、「ぎぃっ!」とさらに苦悶の表情を浮かべる。
「ぁ、あがっ……やめ、やめで……おね、が、やめっ」
びくんと身体を痙攣させるが、縄をほどくどころか、椅子を揺らすだけの力もない。
「貴様ぁあ! ハニエル様にっ」
タン、と一発の銃声。
甲板にいた従業員の一人が、ボリスの頭に銃弾を撃ち込み黙らせた。
「決戦存在を倒せるのは、決戦存在のみ……だが、…………例外もあるだろう」
ぎりぃと、ハニエルの頭に乗せた手に力を込める。
悲痛な叫び声が、むなしく響き渡った。
「行ってこい。この世界での、最後の仕事だ」
膨れ上がった闇が、揚陸艇を、まるごと呑み込んだ。
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