過去ログ - 贖罪の物語 -見滝原に漂う業だらけ-
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/03(火) 23:10:33.42 ID:heb+2RdAP

 杏子は焦っていた。

 杏子が立つのは黒い雨の降るゴルゴダの丘。

 黒い雨はインクのように滴り、粘つき、全てを黒に染め上げる。



杏子(間違いねー、これは幻覚系の魔法だ・・・。だけど!)



 魔法の正体は看破している。

 相手も明らかに魔法少女とは異質の魔力、ともすればそれは魔獣のそれに近い性質を感じるが。

 それでも、決して格上の相手じゃない。

 けれど・・・。



杏子(どんな祈りで契約すればこんな魔法が使えるようになるんだよ!!)



 黒い雨の正体は、他人に依存し、他人を堕落させ、他人を自分と同じ絶望へと引き摺り下ろす、

 「誰かを不幸にしたい」という呪いの感情そのものだった。

 言うまでもなく、魔法少女にとっては猛毒だ。

 ソウルジェムに直撃すれば、一瞬で円環行きである。



杏子(落ち着け、この手の魔法にはコツがある。使い手が魔法少女じゃなくてもそれは変わらないはず。

    幻覚や催眠は・・・相手を観察し続けていなければ使えない)


杏子(そして、そういう奴ほどわかりやすい形で対象の近くに現れたがる。

    ちょっと気づけば手が届くようなところで、相手が破滅するのを観察したいんだ)


杏子「そこだろ!」



 紅い炎を纏った槍が放たれる。

 丘のてっぺんにある『誰も吊るされていない十字架』。

 いるとしたらここだ。

 私だったらここで相手を観察する。



『杏、子・・・』


杏子「!?」



 十字架には杏子の父親が磔にされていた。

 杏子を魔女と謗りながらも、まっすぐに向き合い、やがて自分を受け入れてくれた父親が。

 魂を捧げてなお、幸せであって欲しいと願う、愛するものが。

 両手に杭を打たれて、血を流しながら十字架に吊るされていた。




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