52: ◆eO0MHGE6wPTj[saga]
2015/11/17(火) 20:33:49.98 ID:24ZtkVrg0
4時間経ち、1人目の分が終わった。
あまりの書類の溜め込み具合に呆れた。
また4時間経ち、2人目の分が終わった。
既に怒りなどは無かった。
時間は既に夜の8時を過ぎていた。
達成感や、安心感なんて無かった。
ただただ、涙が止まらなかった。
あんな2人に何も言い返せず、上手く利用されて、こんな時間まで黙々と作業をやっていた自分自身への悔しさが大きすぎたのだ。
辞めたいと思った。
明日から来なければ、どんなにいいか。
苦手な仕事もしなくて良い。
あの2人もいない。
しかしそれを絶対にさせない物があった。
それは凛の笑顔だった。
たまに見せるその笑顔は、俺に頑張る力を与えてくれるような気がしていた。
凛に笑っていて欲しい、その本心で頑張ってきた仕事でもあるのだから。
今すぐにでも会いたいと思った。
こんな俺を励まして欲しいと思った。
「はぁ、凛、もう帰ったのかな。今頃何してんだろ」
気付けばそんな言葉をこぼしていた。
「私? ここにいるけど?」
「え?」
振り向くと、いた。
確かにいた。
スマホを持ってソファに座っていた。
「凛、いつから?」
「ん〜、1時間前位かな? 加蓮達と別れてから忘れ物に気付いて取りにきたら電気がついててさ、覗いてみたらなんかプロデューサーが頑張ってるみたいだったから、後ろで見てたんだよ。あまりに気付かないからどうしようかと思ったけど、邪魔するのも悪いかなって思って、黙って待ってたんだ。そしたらいきなり泣き出すからびっくりしたよ。で、今私のことをなにか言ってたから返事をしたの」
「一時間前って、何やってるんだよ……」
「別にいいじゃん。退屈じゃなかったしね。それで、何をやってたの? 今もいるってことは、昼間から帰ってないんでしょ?」
「え、あぁ。ちょっとな、部長に頼まれた書類をね」
「へえ、そうなんだ、真面目だね、プロデューサーは」
半分は本当で半分は嘘だ。
だが、他のプロデューサーに押し付けられた仕事をこんな夜になるまでやっていた、だなんて言える訳が無かった。
何よりも、俺の事を真面目だと言ってくれる凛に、仕事を取ってこれない悔しさがこみ上げてくる。
先ほど言われた言葉を思い返す。
まともな仕事取ってきてねーだろ。
これが事実であることが辛すぎた。
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