9:名無しNIPPER[saga]
2015/11/04(水) 19:41:02.17 ID:Pnjk1jYA0
「いやぁ、それが全然だめなんですよね。あはは」
これがまた失敗で。
「ふうん、君は担当している子が伸びなくても、悔しくないんだ?」
明らかに声色が変わった。
またやってしまった。そう思ったがもう遅い。
一度口にしたことは二度と取り消すことが出来ないことは身をもって痛感している。
「え、いや、悔しいです」
そう必死に取り繕うが、もうお終いだ。
「今の君の言い方じゃ、頑張ってるけど全然だめなんでもう無理ですって言う意味合いに感じるけど?」
「いえ、決してそういうわけでは」
本当にそういうわけではない。
言葉選びを間違えたのは相手の様子で明らかだが、ここからどう返せばいいのかもあまりよく分からない。
「じゃあどういうわけなの」
「いえ、正直伸び悩んでいまして、どう伝えればいいのかが分からず、重い空気にするのも悪いと思ってこういった言い方をしたのですが、気に障ってしまったのであれば謝罪します。申し訳ございません」
焦りながらも何とか弁明し、頭を下げる。
「じゃあ君は自分のアイドルのことをどう思ってるの? 凛さんのこと」
「え、凛を、ですか? そうですね、俺は凛を凄く大切な人だと思ってます。普通過ぎますか? プロデューサーになって、初めて担当したアイドルですし。ディレクターさんも分かると思いますけど、あまり売れてないじゃないですか。だけど売れて無くても小さい営業や本当に一瞬だけ出してもらえるイベントとかに二人三脚で全力で取り組んで、辛いこととか、苦しいこととかも、2人で乗り越えてきて、そんな風に活動してもう1年も経ってました。1年本気で活動したって言っても、結果が出てないんですよ。口からでは何とでも言えるって思いませんか? 周りからそんな目で見られて、俺はいいんです。責任は俺にありますし。だけど、凛まで巻き込んで、それが本当に辛くて、なのに俺と話すときは笑顔で接してくれて、誰よりも辛いはずなのに。だから今日、ディレクターさんに土下座をしてでも凛にチャンスをくださいって頼もうと思って、来たん、ですけど、それもまた、俺が変なこと言って、駄目にして、また、俺が、俺のせいで」
これ以上はもう話せなかった。
話ながら、凛の気持ちや、俺の不甲斐なさを考え、涙があふれてきてしまった。
もう駄目だなと、心の中で謝った。
ごめんな、凛。
また。
また駄目だったよ……。
ごめんな。
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