過去ログ - モバP「あの笑顔をもう一度」
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96: ◆eO0MHGE6wPTj[saga]
2015/11/23(月) 19:02:43.93 ID:CpNXT5fc0
「凛、いよいよだな」

「うん、私、頑張るから、しっかり見ててね」

「あぁ、もちろん、それじゃ、頑張ってこい」

そう言って俺は凛の背中を押した。

俺が凛のプロデューサーになってから、それまでの俺では考えられないくらいいろいろあった。

楽しいことや嫌なこと、苦しいことだってたくさんあった。

それでもやってこれたのは、紛れもなく凛のおかげだ。

俺は、凛に恩返しをできているだろうか。

感謝の気持ちを伝えてあげられているだろうか。

それは凛本人の感じ方で、俺にはわからない。

それでも、凛のあれだけの笑顔を見れば、少しは勘違いしても許されるんじゃないだろうか。

凛が失った半年間は大きい。

アイドルならそれはあまりに大きすぎる期間だ。

それでも凛は、そんな過去を振り向かずに全力で走っている。

まだまだ見れていない世界を見ようと、全力で。

それなら俺は凛をサポートしていこうと思う。

「凛さん、あと15秒でーす!」

そんな声が飛んだ。

おそらく、あと15秒後には凛の姿が全国に届くのだろう。

凛を見れば、それは明らかに緊張した様子だ。

そんな凛が、泣きそうになりながらこちらを見た。

俺が今凛にしてあげられることは何か、それを考えたが、答えは一つしか出てこなかった。

頑張れ、凛。

口パクだが、確実に届いた。

だって、 凛の表情が、一気に柔らかいものに変わったのだから。

「それでは、次は新コーナーです。渋谷凛さん。よろしくお願いします」

メインキャスターが言うと、カメラが凛に切り替わった。

それは、俺が待ち望んだ夢だった。

あんなに人と話すことが苦手で、友達のいなかった俺と、似た境遇だった凛、2人が頑張ってやっとたどり着いたテレビ出演。

それだけじゃない、これからはもっと楽しいことが待っている。

そのために俺がいるのだから。

「渋谷凛のニュース一刀両断。担当の渋谷凛です。その、よろしく。それじゃあ早速、今日のニュースは――」

そうだ、凛。

その調子でいい。

いつも通りでいい。

テレビに映る凛は、打ち合わせ通り、いつものクールな凛だ。

そのはずなのに、何故だろう。俺には違って見えた。

凛が、今までより楽しそうに、夢を見る少女の顔に。

そんな凛に、俺は心の中で呟いた。

ありがとう。凛。これからもよろしくね。

と。



おしまい


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