過去ログ - 【らっきょ福音】両儀夫妻の日常会話
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17:RB20DETTT ◆Rnna8vyZW.[sage]
2015/11/07(土) 12:04:59.36 ID:Km496q8x0
「随分と急な誘いだね。どこ行くの?」

「先代から使ってる鄙びた温泉宿があるんだ。車なら小一時間で着く」

「へー 近くにそんな場所があったんだ」

「あぁ、オレも久し振りだ」

「あ、それって、保育園から急な連絡あった場合に備えて、わざわざ近場に…?」

「まぁな。でも、今日だけは… 連絡がないことを祈る。だって、せっかく…」


速まる歩調。彼女の下駄が砂利を勢い良く蹴散らし、最後の言葉はよく聴き取れなかった。

殺人衝動を抱えながら、殺人を禁忌とした少女。やがて、その身に命を宿し、戸惑いながらも、不器用な愛情を注ぐ。殺人とは真逆の、もう一つの本能。

起源への裏切りを、彼女の人格はどう咀嚼したのか。彼ならば、いまの彼女をどう認識し得たのか。
そして、どちらでもない彼女は、いまでも変わらず、あの雪の夜に超然と佇んでいるのか。


「式」

「なんだ、幹也」

「呼んだだけ」

「なっ… 子供か、お前は」

「フフッ」

「…なんだよ」

「式」

「だから、なんだよ」

「君はいまでも僕を… 殺したいのかな?」


僕がこちら側に繋ぎ止めてしまった、その罪に。
あの頃よりも伸びた妻の髪に手を伸ばして、小さな頭蓋骨をそっと抱いた。

僕はまだ、彼女を許していない。




2005年10月


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