過去ログ - 【らっきょ福音】両儀夫妻の日常会話
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4:RB20DETTT ◆Rnna8vyZW.[sage]
2015/11/05(木) 19:36:25.41 ID:dbGWHL/S0
涼やかな秋風が、竹林の間隙を縫って頬を撫でる。

靴底に伝わる石畳の冷たさと、左手にまだ残る愛娘の小さな手の温もり。そのコントラストの贅沢を何と呼べば良いのか。

ぼんやり言葉を探しながら、石畳を進む。緩やかに身をくねらせる蛇の様に、緩慢に弧を描きながら続く道。それをたどる僕の左脚は、右脚より少し不器用だ。

風に揺れる竹林のさざめきに耳を浴し、終わりの見えない道程をぼんやりと視界に捉える。懐かしい旋律が唇から漏れた。

「Long and winding road...」

その旋律は、僕の不規則な歩調にアクセントを与える。やがて、石畳の路の先に、古風な武家屋敷が見えてきた。幾夜過ごそうと、一般家庭で育った僕が「我が家」と気軽に呼ぶには余りに規格外な、妻の実家。

着物姿の細身の女性が、門柱に身を預けている。燻んだ緋色と橙色で染め上げられた反物に、朝日を受けて鈍く輝く白銀の帯。
いつもより気怠げな佇まい。その眼差しは天高く、秋空へ。鳥のシルエットでも追っているのだろうか。


「ただいま」
「あぁ、どんな様子だった、アイツ?」


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