過去ログ - 【らっきょ福音】両儀夫妻の日常会話
1- 20
48:RB20DETTT ◆Rnna8vyZW.[sage]
2015/11/11(水) 16:45:13.07 ID:N4A/X1gS0
夜気で冷えきった床に、爪先から降りる。火照った足裏を伝って、フローリングの硬い感触が私の脊椎を犯す。じわりと疼く下腹部。

ずっと彼と接触していたせいか。いまの私の身体は、どんな感触でも快感と誤認する。
不意に襲ってきた羞恥をバネにして、一息に立ち上がる。フラつく視界。それもあえて補正せず、身体が踊るに任せて、冷蔵庫までたどり着く。
まるで飛び石を渡る道化。この身体は、いつになく機嫌が良いらしい。月明かりを照明に、久方振りに一曲舞ってみようか。

冷蔵庫の中にポツンと残された、最後のボルヴィックのボトルに手を伸ばす。
彼が起きたら、一緒に買いに行こう。歩きながら腕を絡ませたら、きっと面白い顔が見られるだろうな。よし、決まり。

透明の液体が、口内に残る彼の液体と絡み合いながら、喉の奥へと流れ込んでいく。私の身体はもう、それを異物とは認識しない。
彼との営みは願った通りの結果を私にもたらして、理性は早々に思考放棄。本能だけが満場一致で是認。

「相性が良いのは、直感でわかってたけど。まさかこんなに早くとはね…」

全身の細胞が、静かな悦びにさざめく。体内にもう一つの人格が宿る。コレは、懐かしい感覚。いや、違うな。今回のは、宿った瞬間から別離が確定している。
そういう意味で、かつてのアイツとは似て非なるが… それでも否応なしに思い出さずにはいられない。

「なぁ、こんなものが、お前が見た夢なのか」

かつて、私の中にいた、もう一人の自分に問い掛けてみる。沈黙。

「こんなものの為に、お前は死んだのか」

私の半身を削ぎ切って、去って行ったもう一つの人格。私を黒い渦の上に、2年間も置き去りにして。
織といい、幹也といい、男ってなんて身勝手で、強引で、幸せな生き物なのだろう。

私だけが一方的に削られ、孕み、また削られる。なんて理不尽。なんて不公平な幸せ。
恨み言すらもう届かないなら、見守るしかないじゃないか。

「いいぜ。どうせもう手遅れなんだから。オレが見てやるよ、お前の夢の続き…」




1999年3月


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
83Res/36.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice