過去ログ - 勇者「デブと一緒に旅に出ることになった」
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144: ◆LsZ4kFgXss[saga]
2016/01/25(月) 22:22:26.94 ID:vJkRRw/IO
バスタオルを身体に巻いた美女達は、漂う湯煙の中を裸足で歩いていった。
隣で男共の騒ぐ声が聞こえるが、気にしないことにした。
長い間、後宮に閉じ込められていたソラトにとって、温泉は未知の経験なのだ。
楽しまずして、なんとする。
桶で湯を掬い、肩から腹にゆっくりかける。
温かさと同時に、鋭い痛みを踝に感じた。

ソラト「なに……これ……」

彼女は愕然とした。
右の踝が青紫色に染まっている。
どうやら傷口から菌が入ったらしい。
しかし、いつこんな傷を作ったのだろう?
次から次へと去来する記憶を拾い上げ、丁寧に確かめてゆく。
思い当たる節があった。

ソラト「勇者に初めて会った時、マッチョに襲われて切り傷を作っていたんだっけ」

どうせ大した傷ではない、と洗いもせずにこれまで放置してきたのだ。
日頃の行いが祟ったとしか思えぬ。
しゃがんだままのソラトに、金髪碧眼の少女が無表情で尋ねた。

女騎士「皇妃様、いかがなされましたか。のぼせなさったのならば、宿まで運ばせて頂きますが」

ソラト「来たばかりなのにのぼせるわけないでしょ。さ、早くお湯に浸かるわよ。いつ馬鹿共が覗いてくるか、予測不可能だからね」

彼女は先ほどの激痛で入浴にやや躊躇していたが、意を決して再び足を湯につけると、今度は痛まなかった。
奥の方まで泳いでいき、石に頭を乗せる。
冷んやりとした感触が、ソラトの白く細いうなじを撫でた。
思わず、ほぅと溜息が出る。

ソラト「知らないって本当に恐ろしいことなのね。あたし、今までこんな気持ちいい水浴びしたことないわ」

女騎士「そうですか」

ソラト「草原にいた頃は、黄土色の川にサッと入るだけだったもの。毎日全身が泥臭くて泥臭くてしかたなかったわ。でも、お母さんはそれもトクズ族の修行だって言ってた」

女騎士「そうですか」

ソラト「ねね、あんたのお母さんってどんな人だったの?」

女騎士「わたくしの母上……」

あまりよく覚えていない。
修行に修行を重ねた日々。
記憶にあるのは罰を与えるための鞭のみ。
我々の先祖は偉大なる伝説の勇者様だから、その子孫が弱くてどうする、醜態を晒すな。
父からはいつも叱られてばかりいた。
母がどんな人だったのか、考えてもやはり朧げなままだ。



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