過去ログ - 【ゆるゆり】BAR Funamiの日常
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/09(月) 00:40:55.55 ID:Ms5wpsxYo
……バーテンダーとは、無論バーでお酒を作る人である。自分の技量を駆使してお客を楽しませるのが仕事であるが、その技量のうちには「会話術」も含まれる。

お酒を楽しみにきたのか、ひとときの会話を望みに来たのか、はたまた誰にも邪魔されない空間を求めにきたのか……客の来店動機を瞬時に見極め、その人に会ったサービスをするのがプロのバーテンダーというものだ。

お酒がのめなくても、バーテンとの会話が楽しいから通っている……世の中にはそういう人だって少なくない。この職業において、会話術というものはお酒を作ることとほぼ同等に大切なことなのだ。


結衣はお酒を作る方面に関しては自信があったが、会話術のほうは……ちょっと不安なところがあった。人見知りというわけではないが、相手をよく見てから接するタイプゆえに、相手のことがわかるまではかなり遠慮しがちになってしまうのだ。何を話せばいいか、わからない。

「何を作りましょう」と聞くのも、まだ早い気がする……そもそもこの人、昨日は「カクテルください」なんて大雑把に言っちゃうくらいバーというものに慣れてなさそうなのに、いったい何が目的で来てるんだ……? そんな思考を重ねていた結衣に、綾乃は思い切ったように尋ねた。


綾乃「あの、昨日のお客さんはなんと言う方なのでしょうか」

結衣「えっ?」

綾乃「昨日、この席に座っていた……私に話しかけてきてくれた、リボンの人です」


結衣「ああ、あいつは……じゃなかった、あの人は歳納京子って言って……」


結衣「言って……」


結衣(……あれ、私、京子の詳しいこと何も知らない……!?///)


言葉が続かないまま、結衣は固まってしまった。京子の詳しい人となりを説明したかったが、毎日顔を突き合わせている結衣自身、京子の住んでいる場所も職業さえも何もわからないのだった。



結衣「歳納京子っていう、やたら毎日来るへんな客です……」

綾乃「…………」


結衣の純粋な京子観をそのまま編集せずに言葉にすると、この滑稽さはさすがにもう取り繕えないなと結衣はおかしくなってしまった。


雰囲気の良いバーの、腕の良いかっこいいバーテンを目指していた結衣だが、その実はにぎやかで楽しいことが好きだし、自分自身ツッコミ体質で、人を笑わせたりするのも好きだった。

京子やちなつがいてくれるときは、素の自分でいられた。新規のお客さんが来てくれる時は意気込んでしまって、素の自分を隠して格好つけていた。

今もこうして飾ろうとしていたのに、まだ来てもいない京子のおかげで、繕った飾りが全部壊れてしまった。大事なお客を目の前にして、変なことを言ってしまった。

そんな投げやりな気持ちになりかけていた結衣だが、お客さんは不審がるでも引いてしまうでもなく、真面目な顔をしていた。


綾乃「毎日来るってことは、今日も……?」

結衣「ええ、たぶん来ると思いますよ。何時かになるかはわからないけど……」

綾乃「よかった……」



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