過去ログ - 【ゆるゆり】BAR Funamiの日常
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/11/09(月) 00:41:41.67 ID:Ms5wpsxYo
よかったって、どういうことだろう……と思っていると、両の肘をカウンターにのせて頬杖をついた綾乃は、虚空を見つめるようにして話し出した。
綾乃「私……失恋したんです。昨日」
結衣「えっ……」
綾乃「最初から、勝ち目の無い勝負みたいな恋だったんですけど……それでも勢いでなんとかなると思ってたのに、やっぱりだめで」
綾乃「絶対に無理だって気づいてるのに、やめられなくて。中途半端な自分が嫌いになりそうでした。何をやってもふっきれない……夢を望んでるくせに、恥ずかしがりやで受身な自分」
綾乃「昨日はとうとうそのぶつかり合う想いが、自分の中ではじけたんです。全部終わりにして、新しくやり直さなきゃ。受身じゃなくて、自分から動けるようにならなきゃって思いました」
綾乃「泣きながら、そんなことを考えながら歩いていると、このお店の看板が目に付いたんです。バーなんて一回も入ったことなかったけど、とにかく自分が変わるきっかけがほしくて。お酒の力を使って、今までの自分への決別と、新しい一歩を踏み出そうと思って、ドアを開けました」
結衣「…………」
綾乃「それまで、入ったことも無いくせに、バーには怖い場所だという偏見がありました。新参者に厳しくて、子供みたいな甘い考えの私はすぐに見抜かれて見下されてしまうような場所だと……でも、ここはそんな感じが微塵もありませんでした。綺麗な女の人しかいなくて、みんな静かにしてたけど……言葉に出さないコミュニケーションをとっていて、どことなく……楽しげで」
綾乃「本当に何にも知らない私に、昨日の人……歳納さんはすごく親切にしてくれました。困ってる私を助けてくれて、話も聞こうとしてくれて」
綾乃「怖い怖いと思っていた場所だからこそ、そんな人に会えたことがとても嬉しかった。マスターさんよりも、このお店の中心みたいな雰囲気のその人が、とても大きく見えて、かっこよくて……」
綾乃の話を聞くうち、結衣はだんだん恐ろしくなってきた。この人が二日続けて来てくれたのは、完全に京子のためだった。
京子のせいですぐに帰られてしまったのだと、昨日は結衣とちなつがいつにもまして非難していたのに、京子の作戦が功を奏していたのだ。
しかもどうやら綾乃は、京子にべた惚れのようである。頬杖をつく顔はまだお酒を飲んでもいないのにほんのり赤くなって、釣り目がちな目もとろんとなっていた。
綾乃「私……あの人に、歳納さんについていこうって一瞬で決めました。そこでお酒も飲んだら……動かずにはいられなかったんです。一刻も早く過去の自分を捨てて、新しいこの人の元へ行かなきゃって。だから昨日は、すぐに帰ってしまいました。憧れの人と、別れてきたんです」
結衣(ええ……!?)
綾乃「毎日ここに来てくれるんですよね? だったら……私も毎日、ここに来ようかな、って……いいですか?///」
結衣「あ、ありがとうございます……!」ぺこり
新規のお客さんどころか、どうやら常連さんが増えてしまうようだった。今日自分に課せたクエストが、お酒の一杯も振舞わずにまさかのクリアー。
少しひっかかるのは、京子が綾乃のことをどう思っているのかがまったくわからないのだった。まさか君の瞳に乾杯とかふざけたことをやっていた自分が、こんなに思い切り惚れられることになっているとは想像もしていないことだろう。
いや、それ以前にお客さん、京子はやめておいたほうがいいと思いますよ……!! と言おうと思って、口を噤んだ。
京子のことを何も知らない自分が、そんなことを言うのは野暮だ。それにこの人は、自分が京子に対してなんとなく抱いている変なイメージを再現させた、昨日のあの京子に対して惚れているのだった。
それでも、やめておいたほうがいいという言葉は喉奥のすぐそこまで出かけている。それについて自分でもどういうことかわからず、なぜ自分はこんなに京子を勧めたがらないのだろう……と、お客を前にして深い思考に陥ってしまいそうになったとき、綾乃が開けたときよりも大きな音をたてて、ドアの飾りがからんころんと鳴った。
「あれっ!? 昨日の人だ!!」
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