過去ログ - 【ゆるゆり】BAR Funamiの日常
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39:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/09(月) 01:02:54.77 ID:Ms5wpsxYo
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「……ああ、わかったよ。明日にでも日本を発って、そっちに向かう。……うん、うん。それじゃ、向こうで会おう」


通話を切って携帯電話を置くと、大きな椅子ごとくるりと回って窓の外を見た先生は、少し悩ましげに小さなため息をつきました。


―――どうしたんですか?

私は熱いコーヒーを淹れて、先生に差し出しました。


「おっ、すまんな。いやいや、知人の急用で明日にでもイギリスへ発たねばならなくなってな……まったく人使いの荒い奴だよ」


持っていただけの依頼ファイルを机の上に置いてコーヒーをすすると、先生は目を閉じてリラックスしました。


ここは、西垣探偵事務所。そこの主……西垣奈々は、その業界では少し有名と言っていいほどの探偵です。

そして私は、そんな奈々を先生と呼んで慕い、あらゆる面で補助から雑用から何からをいっぱい担当する先生の片腕……もとい、助手。名前は松本りせ。


―――明日はイギリスですか。旅支度を整えなければいけませんね。


奈々「うむ、そうなんだが……」


先生は、薄目で空を見ながら私に言いました。


奈々「今回は……松本はこっちに残っててくれないか?」

りせ「っ!?」


私は小さく飛び上がって驚きました。てっきり明日から、先生と二人きりの空の旅だと思ったのに……

なんで、なんで私を置いていってしまうんですか?


奈々「いや、実は明日……私の方から別件の依頼者と打ち合わせの予定を入れていたんだが、今入ったイギリスの案件も重大なようでな。かといって自分から取り付けた予定をこっちの都合で直前に変えたりしたら失礼だし……信用にも関わるだろう?」


奈々「そこでだ。今回は松本に、一人で明日の打ち合わせにいってきてもらいたい」

りせ「!」


髪に隠れていない方の、先生の片目が優しく私を見つめました。

―――私が、一人で?


奈々「なーに、松本もしばらく私のそばで調査を手伝ってくれていたから、基本的なノウハウは身についている頃だと思ってな。お願いできるか?」


クスリと笑いながら、先生はコーヒーを一口すすりました。

本当は先生と一緒にイギリスへ行きたかったけど……先生は私に期待してくれている。なにより先生が困っているのを、助手の私が助けないでどうする?

そして先生の期待には……何としてでも応えてみせたい。


奈々「なにも依頼内容をすべてこなしてみせろと言ってるわけじゃないんだ。松本にも任せられそうな気軽な案件だから、それを進めていてほしいだけさ。私が戻るまでの間……頼んだぞ?」


先生は依頼ファイルを手渡しました。私はそれを両手で受け取り、胸の前でかかえて深呼吸します。


―――やってみせましょう。依頼者の話を聞いて調査を進めるだけじゃない、私一人で解決までしてみせる! 私だって先生の片腕を名乗る探偵のはしくれなんですから、立派にできるってところを見せてあげます。


こうして、私の単独調査の日々は始まりました。



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