過去ログ - 【安達としまむら】みずいろはなび
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9: ◆FRtTimAs0A[saga]
2015/11/09(月) 21:19:07.44 ID:VG1tHPTM0

「それでヤチーは、恋がどういうものだか知ってるの?」

「えーと・・・ちょっとまってください」

はい。と待ったものの、考え事をしてるようには見えない。
どちらかといえばぼーっとして、宙を見つめたまま固まっている。まさかねーちゃんの教科書を見てるってわけでもあるまいし。
言い訳でも考えてるの?とおちょくってみようとした瞬間、口が開いた。

「恋――人を好きになって、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ち」

「・・・」

「の、ことですー」

特徴の無い、のっぺりとしたトーンで恋について読み上げられてわたしは、肩をびくりと震わせる。今流行りの、機械音声を彷彿とさせる声だった。
それでも追って出てきた言葉は、あきれるほどいつもと変わらなくて。
不意に肩が、じんとした。

「・・・満たされないの?」

「満たされないらしいです」

恋ってそんなに報われないものなの?
初恋はレモン味、って聞いたことあるけど、レモンは満たされない味かな。
すっぱいから嫌いだけど。レモン。

「好きで、ずっとそばにいたい・・・のが、恋・・・」

ふむ。わかるようなわからないような。

「はい。・・・いたいですか?」

「・・・べつに、どこも痛くないよ?」

その質問に答えることは簡単なのに、どうしてだかこたえられる気がしなくて、わかりやすくとぼけてみる。
ふくれっつらのヤチーが見れるかなと思いきや、ヤチーはもうわたしのほうを見ていなくて。
仕方なく、寝息を聞きながら窓の外の、遠くの空、桟で見切れた入道雲を眺めることにした。



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