22:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/10(火) 23:59:56.91 ID:fk92G9zco
思えば……京子はいつだって、私のもとに来てくれていた。
幼いころは、私を頼って近づいてきてくれていた。人見知りで弱気な京子には心から頼れる存在というものが少なく、私もそのころから既に京子の支えになる義務感すら覚えていた気がする。“単なる友達”である時間などあったかどうかもわからない。京子は私にとって守らなければいけない特別な存在だった。
京子を泣かせたくない。京子の笑顔がみたい。そうして時間は経っていき、京子はずっと傍にいた私の目から見ても変化がわかるほどにすくすくと元気に育った。いつでも場を明るくして、周りを笑顔にするような子になっていった。
もはや京子に自分は必要ないのではないか? という疑問を私が持たなかったのは、京子が幼少から今にかけてまで、ずっと私の傍にいてくれたからだった。そうした過程を踏んだ背景があったからこそ、京子は特別な理由もなく私の傍にずっといてくれたのだ。
こちらから誘わなくたって、いつでも向こうから遊びに来てくれた。私のところに来るのが楽しみだといつも言ってくれていた。私は気恥ずかしさに逃げてしまうこともあった。それでも京子は自分の傍にありつづけてくれていた。
京子を支えると言っておきながら、支えられていたのは間違いなく自分だった。
来てくれるのはいつも京子の方からで、それに比べれば自分から京子に向かったことなど……圧倒的に少ないと言っていい。
結衣(もっと……一緒にいればよかった)
結衣(もっと……京子を追いかければよかった)
結衣(たとえ隣にいたとしても……それを当たり前にしちゃだめだった)
結衣(京子のこと、何よりも大切にしないといけなかったんだ……)
涙の沁みこんだ京子の枕に頬をする。そこで急に身体が言うことを何もきかなくなった。身体を動かすための力がなくなってしまったのだ。
結衣「きょう……こ……」
重い瞼を支えられずに閉じる。薄れゆく視界の中……最後にそこに少しだけ、京子の顔を思い浮かべることができた。
思い出の中の京子は、安らかな笑顔を浮かべてくれていた。
なつかしく温かい京子の匂いに包まれ……私は身体を小さくまるめて、眠った……
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