33:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/11(水) 00:06:28.43 ID:BRoeWTnho
ここは、京子のいない世界だ。
どうやら私以外に、京子のことを知っている人はいないらしい。
それならば……私はここを出ないといけない。
結衣「私……元の世界に帰らなきゃ」
ちなつ「は……?」
結衣「京子のいる世界……私の知っているちなつちゃんがいる世界に帰らなきゃ」
ちなつ「な、なんのことです……?///」
おかしなことを言い出す私を見て、ちなつちゃんはまるで不思議ちゃんを目の当たりにしたかのように面くらっていた。
その抜けた顔がなんだかおもしろくて、不安な夢のはずなのに、私の心には笑顔になるだけの余裕が生まれた。立ち上がった足をもう一度座り直して、ちなつちゃんに面と向き合った。
たとえ私のことを忘れてしまったとしても……私はちなつちゃんを忘れないよ。
結衣「ちなつちゃんにはしっかり話しておこうかな。急にこんなこと聞かされても困るだけかもしれないけど……それでも聴いてほしい」
ちなつ「はぁ……」
結衣「……この部屋はね、昔は茶道部室だったんだ。でも私が入学してくるころにはもう部員不足で廃部になっちゃってた。それ以来この茶室は誰に使われることもない空き部屋になってたんだ」
ちなつ「はい、その通りです」
結衣「そこに私の友達、歳納京子はここぞとばかりに目をつけた。誰も使っていないなら好きに使わせてもらおうよと私を誘い、非公式だけど『ごらく部』という部活をここに勝手に作ったんだ」
ちなつ「ええっ、それは知らなかったです……!」
まるで後輩に昔話を聞かせているかのようだった。
この世界のちなつちゃんからすれば、今の私は適当にでっちあげた作り話を言い聞かせている変な先輩かもしれない。けれど真剣に聞き入ってくれるあたりに、ちなつちゃんの純粋な人柄の良さを感じた。
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