316:名無しNIPPER[saga]
2015/12/14(月) 22:21:34.19 ID:hMgqCz0ko
本当に、俺たちがそんなことをする理由はない。
勝ち負けになんてもともとこだわっていないし、みんな、人のつくったものを踏みにじれるほど無神経じゃない。
でも、それはこっちの言い分だ。
たしかに、第二文芸部の立場からすると、俺たちの仕業としか考えられないだろう。
「とりあえず、落ち着け」と、怒鳴り声をあげている男子生徒を、他の生徒が諭す。
そこに及川さんが現れて、彼らにひとまず部室に戻るように言った。
「悪いね。興奮してるみたいなんだ。許してやってくれ」
と、彼は部長の目を見て言った。
「うん。仕方ないよ」
他の第二の部員たちが部室に戻ってから、及川さんは俺たちの顔を見回した。
「とりあえず、誰がしたのかは分からないけど、原稿自体はもうパソコンに入ってるから、発行は問題なくできるんだ」
「……誰かがしたと、思ってるんですか?」
高森が、おそるおそる、そう訊ねた。及川さんは、怒りのこもった皮肉げな笑みを浮かべた。
「たまたま風にさらわれて、たまたま焼却炉に入って、たまたま火がついたんだって思う?」
どっちにしても、あんまり気分の良い話じゃない、と彼は言う。
「きみたちを疑ってるわけじゃないよ」と彼は首を横に振った。
「原稿をしまっていた場所は部員しか知らないし、かといって、誰にも見つからないようにしていたわけでもない。
疑うつもりになれば、誰のことだって疑える。きみたち以外にも、うちの部員に個人的な恨みがある人間がいたのかもしれないし」
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