40:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:37:41.71 ID:0oXNO4iLo
◇
なんとなくすぐに部室に戻る気になれなくて、俺は東校舎の屋上へと向かった。
本校舎の屋上も東校舎の屋上も、一応開放されてる。
天気の良い日には本校舎の屋上をランチに使う生徒もすくなくない。
もともとそういう用途だったのだろう。芝生が植えられていて、ベンチなんかも置かれていたりする。
東校舎の屋上は、そういうのとは違う。すこしそっけなくて、どちらかといえばひとりになるための空間に近い。
ベンチも芝生もない。その差はなんとなく、示唆的だという気がする。
よく晴れた五月、じっとしているだけで汗の滲んでくる肌を、屋上に出た途端、フェンス越しの風がゆるく撫でた。
頬をたれた汗を手のひらで拭う。空はゆっくりと夕焼けに近付いていく。俺は何かを思い出しそうになった。
さっきの女の子の顔を思い出す。
見間違いかもしれないけど、俺は彼女のことを知っているような気がする。
考えないようにしていたことを、また、考えてしまう。 そんなタイミングで、
「暇なの?」
って、うしろから声がした。
「……びっくりした」
振り返ると、校舎につながる鉄扉のすぐそば、かくれるみたいに、ひとりの女の子が膝を抱えて座っていた。
変な日だ。女の子とばかり会う。ゴローは帰っちゃうし。
「……佐伯?」
「うん。佐伯ですよ」
と言って、彼女は手に持っていたシャボン玉用のストローをふっと吹き込んだ。
吹きこまれたシャボンはまんまるく光ながら風に乗る。
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