802:名無しNIPPER[saga]
2016/03/04(金) 23:09:47.43 ID:iGqfryU8o
◇
るーの証言と俺の証言に食い違いを生むわけにはいかなかったから、俺は「体調を崩した後輩に付き添って保健室に行った」と報告した。疑われなかった。
自分の身体がなんとなくタバコ臭いような気がして気になったけど、周囲は特に反応しなかった。
俺は自分の制服の内ポケットに触れてみる。そこにはたしかに何かがある。四角い箱と丸みを帯びた楕円柱。煙草とライターだ。確かめなくても分かる。
テスト前の授業なんて出題範囲についての解説だ。聞いておくに越したことはないけど、まあ今はいいだろう。
ちょっと考えてみよう。
俺は記憶を手繰る。嘉山孝之と遭遇した昼休みのこと。そこで俺は鷹島スクイを見た。小鳥遊こさちに会った。
大丈夫、そこまでは覚えている。記憶がまがい物でないなら。
鷹島スクイは部誌を燃やしたという。嘉山孝之は俺が鷹島スクイだという。俺の制服には覚えのない煙草が入っている。
小鳥遊こさちは?
彼女は何かを言っていた。何かを俺に見せた。……そうだ、写真だ。俺が定期テストを受けている場面、煙草を買っている場面。
燃やした覚えはあるか? ――ない。
定期テストを受けた覚えは? ――ない。
煙草を買った覚え。 ――ない。
にもかかわらず、俺はそれを行っている。
……いや。
でもそれはあくまで、こさちや嘉山の言ったことだ。
こさちの写真だって、どこまで信用できるかわからない。
そもそも彼女自体、不自然なところしかないのだ。
スクイが俺であるという証明は、されていない。
しいて言えば、この煙草だけ……。
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