過去ログ - 屋上に昇って
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820:名無しNIPPER[saga]
2016/03/08(火) 00:14:23.19 ID:In4DJ8ILo



 触れたこともないベースにちょっと触る気になったのは、たぶんゴローの言葉のおかげなんだと思う。
 よだかのこと、嘉山のこと、死んでしまった猫のこと。
 
“それはもういいのだ”と、俺は言いたくなかった。

“そんなことよりも”とか、“考えても仕方ないから”とか、思いたくなかった。

 ゴローも、よだかも、まるで見えてるみたいに、簡単そうに俺の心のありようを言い当てる。
 それが少し恥ずかしい。

 でも、そんなことこそ、それこそ、仕方ないことだ。

 るーの家は以前みた通りの大きな建物だった。

「どうぞ」と通されてリビングらしき部屋に入ると、すず姉が麦茶を飲んでいた。

「来たね」

 ソファにもたれて足を組んだまま、グラスの中の氷をくるくる揺らしながら、すず姉は麦茶を飲んでいた。

「バンドやるんだって?」

「……どうも」

 とりあえず頭をさげると、すず姉はちょっとさびしそうに微笑んだ。




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