86:名無しNIPPER[saga]
2015/11/17(火) 21:52:56.65 ID:ZFXDl97Lo
「……呼び捨て?」
「あ、た、タクミ……先輩」
「はい」
「わたし、藤宮ちはるです」
「……さっきも聞いたよ」
「はい。藤宮です」
「うん。それで、藤宮……」
なんと呼ぶべきか、一瞬だけ迷って。
いちばん違和感のある呼び方を、けっきょく選んだ。
やっぱり、彼女は"そう"なんだろうか。名前からして、そうとしか考えられない。
でも……そうだとしたら、彼女の方から、何か言ってくるはずだ。
もし、覚えていれば。
もし"そう"だとしても、忘れているなら仕方ない。
たぶん、忘れてしまっているだろう。子供の頃のことだ。もうずっと昔のこと。
あれから背だって伸びた。声変わりだってした。内面だってあの頃のままとはいかない。
屈折したりひねくれたりしてきた。当時の自分がどうだったかなんて、思い出せない。
彼女がもしも本当に"そう"で、俺のことを忘れてしまっているんだとしたら。
俺が恐れていたとおりに、何もかもが変わってしまっていたんだとしたら。
やっぱり少し悲しい。それが恐くて、探すことだってできずにいたのに。
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