過去ログ - ほむら「憧憬と代替」 -SS速報VIP

過去ログ - ほむら「憧憬と代替」

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1: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:16:29.16 ID:Txdvh5tjo

　夏雲が漂う空はこの上なく青くて遠い。
　空を飛ぶ術を持つ私だけれど、知る空はいつだって真っ暗でこの上ないのだ。
　良く知る空にはいつだって月と星が浮かんでいて、眼下には足を引くように瘴気が渦巻いている。

　それが私、暁美ほむらの良く知る空だ。

　厚い雲と低い曇、それから青と飛行機雲。そんなものを見上げて目を細める。
　晴れ晴れとした空模様とは裏腹に私の心はいつだって暗澹。

　どんなにこの世界が素晴らしく澄み切っていたとしても、ここにまどかはいない。
ただ、ただそれだけなのだ。

「今更、よね」

「何が今更なんですの？」

　ほとんど無意識に零れ落ちた一言に問いかけを受け、思わずうんざりしたように頭を振る。

　同性から見ても端的な、異性からすれば思わず食い入るような美少女。
名前は志筑仁美。私のクラスメイトでこの世界では美樹さやかの親友。
そして悔しいことにまどかの親友でもあったお嬢様だ。

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2: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:17:18.32 ID:Txdvh5tjo

「何か用かしら？」

「クラスメイトが木陰のベンチで黄昏ていたら声をかけるのが普通では？」

3: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:18:21.87 ID:Txdvh5tjo

「ほむらさん……」

　彼女はため息と共に私の名前だけを呟くにとどまった。
　そして、そこからさらに一拍置いてから意を決したように口火を切る。

4: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:19:46.02 ID:Txdvh5tjo

「その、ほむらさんはあまりにも平然とし過ぎています」

「確かに私と美樹さやかは一応は友人と呼べる間柄ではあったと思うわ。
だからと言って、私にとってはたった一ヶ月程度の級友でしかないもの。

5: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:20:22.38 ID:Txdvh5tjo

「そんなことないわ。私には分からないことだらけよ」

「いいえ、しかもそれはさやかさんだけに限った話ではありません。
私のこともそうですし、ほかの子のことも……」

6: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:21:10.63 ID:Txdvh5tjo

「えぇ、まるでそうなることが分かっているとでも言わんばかりに先んじている」

「そんなことあるわけないでしょう。私はただの中学生よ？」

7: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:22:01.46 ID:Txdvh5tjo

「そう、ですか……」

　落胆、だろうか。沈んだ様子を見せる志筑仁美に私は疑問を覚える。
　彼女は一体何に対して落胆しているのか。

8: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:23:02.33 ID:Txdvh5tjo

　怒り、苛立ち。
　しかしそんなものはお門違いでしかなく、どう贔屓目に見ても私が癇癪を起しているだけに過ぎない。

　だから奥歯を噛みしめて長く、ゆっくりと、長く長く、

9: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:24:05.95 ID:Txdvh5tjo

「ねぇ、志筑仁美。一つだけ、私も聞いていいかしら」

「えっ、えぇ？　構いませんが……」

10: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:25:03.07 ID:Txdvh5tjo

　魔獣。
　そいつは夜闇に紛れて現れる。

11: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:25:53.43 ID:Txdvh5tjo

「いつにもまして数が多いわね」

　日が沈み切りすっかりと夜の様相を呈し、人の疎らになった駅のロータリーで私は小さく呟いた。
　夜も半ばになってしまえば駅前と言えど静まり返る。

12: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:27:16.45 ID:Txdvh5tjo

　魔獣は魔女と違い基本的に固有の結界を作ることが出来ないらしい。
インキュベーターに魔女結界の話をしたときには、
『非常に興味深いね。つまりそれはそれだけ個々体が強力な力を持っている、ということに他ならないからね』
と言っていた。加えて私自身の経験も踏まえたうえで断言できる。

13: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:28:03.80 ID:Txdvh5tjo

　だからこの世界の魔法少女は瘴気から身を守るための障壁を展開し続けながら戦う。
これが対魔獣が対魔女と比べて特別楽にならない理由の一つ。

　もう一つの違いはと言えば、魔獣同士が連携するということ。

14: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:28:51.71 ID:Txdvh5tjo

「お前たちはより人に近い」

　呟いた言葉は忌々しいことに間近の魔獣に認識されてしまったらしい。
　物色するように人ごみを眺めていた群体の視線が一斉にこちらへと注がれた。

15: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:30:06.73 ID:Txdvh5tjo

　まずは牽制の一撃。
　強力な追尾性能を持つ魔法の矢を放ち、間髪を入れずに地を蹴り移動を開始する。

　牽制の一矢とはつまり、

16: ◆FLVUV.9phY[sage]
2015/11/15(日) 23:31:05.27 ID:Txdvh5tjo

　だけれど魔獣は違う。
　魔獣はどんな場面においても目の前の相手を殺しきるための一撃へと繋げるために行動する。

　そこには気紛れな行動や余裕と言った戦術的な『遊び』が介在する余地はない。

17:訂正 ◆FLVUV.9phY[saga]
2015/11/15(日) 23:32:42.93 ID:Txdvh5tjo

　だけれど魔獣は違う。
　魔獣はどんな場面においても目の前の相手を殺しきるための一撃へと繋げるために行動する。

　そこには気紛れな行動や余裕と言った戦術的な『遊び』が介在する余地はない。

18: ◆FLVUV.9phY[saga]
2015/11/15(日) 23:34:14.01 ID:Txdvh5tjo

　魔獣は魔女とは違い群れて連携する。
　裏を返せば同士討ちを嫌うということだ。

　圧倒的な数的不利に直面した場合には――、

19: ◆FLVUV.9phY[saga]
2015/11/15(日) 23:35:01.24 ID:Txdvh5tjo

　前から振り下ろされる拳を加速して掻い潜り、そのまま眉間に一撃を叩きつける。
　追いかけるように振るわれる腕を上へと飛びあがることでギリギリ躱し、
そのまま相手の腕を蹴りつけて後ろへと回り込み一矢を放つ。

20: ◆FLVUV.9phY[saga]
2015/11/15(日) 23:35:40.69 ID:Txdvh5tjo

　瞬間、静寂。

　直後、猛獣の一声。

21: ◆FLVUV.9phY[saga]
2015/11/15(日) 23:36:54.20 ID:Txdvh5tjo

　姿は鳥、特に猛禽類、いや正確にフクロウ型だ。

　ただ本物とは決定的に違う。

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