過去ログ - 【R-18】絵里「サイアミーズ・ワルツ」
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30: ◆rB0CA7jVXk[sage saga]
2015/11/26(木) 01:36:50.60 ID:HOdWGeeOo

 海未の胸が鳴ってる。
 耳をぴとっと付けて、海未が生きてる音を聞くのが好きだった。

 目を閉じていると規則的なリズムが波の満ち引きみたいで、
 静かな水面に浮かんで、
 羊水に包まれてた頃、遠いとおい昔のこと、思い出せそうだった。

 このまま動きたくない。
 朝なんて来ないで、一個の生命体でいたままで、
 海未とふたり、身体の一部がつながった未熟児になって、
 本当はこの場所で永遠に産まれずに浮かんでいたかった。


 時計の針がちくちく聞こえる。
 あんなに熱かった肌が、クーラーに乾かされて冷えていく。
 カーテンの隙間が青みがかって色が分けられていく。
 私に添えられた手のひらはこぼれ落ちて、
 抱えている腕も汗ばんでいく。

 海未にあいされている間は忘れていられたこと、
 世界が同じリズムで時を進めていくってこと、

 海未はおだやかにほほえんでいて、
 なのに私は意味もなくさみしいって感じて、
 私とあなたが違う人間で
 こうして身体を重ねても同じ気持ちでいられないこと、

 ぜんぶが私たちを引き剥がそうとする。

 世界で一番近いところにいるのに、波にさらわれてしまいそうだった。




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