過去ログ - 安部菜々「鋼のロンリーハート」
1- 20
81:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:31:49.03 ID:+iT0SMHJo
 出番の時刻が近づいてくるにつれ、胃の辺りが重苦しくなってくる。
 自分で気づかないうちに椅子を立ったり、あるいは座ったりしている。
 おとなしくしていようと思えば、ステージ衣装のリボンを結んだり解いたりして、コントロールができない。

 出番の十分前にもなると焦り始めて深呼吸をするけれど、うまくいかず過呼吸気味になる。
以下略



82:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:32:27.29 ID:+iT0SMHJo
「なるようになります」

 彼のらしくない言葉に、私は素っ頓狂な声を上げた。

「あ、あ、あなたっ、ホントにロボットですか!」
以下略



83:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:33:03.99 ID:+iT0SMHJo
 そのとき、ステージのほうから拍手が起こった。
 そして、マイクを通した「ありがとう」の声。ついに出番だ。

 私とプロデューサーさんは一度顔を見合わせると、それきりなにも言わなかった。

以下略



84:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:33:30.47 ID:+iT0SMHJo
「みなさーん! こんにちはーっ!」

 まだ、緊張していた。けれど、嫌な緊張ではない。
 張り詰めた心から元気いっぱいに声を出す。

以下略



85:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:34:00.54 ID:+iT0SMHJo
「ウサミンパワーでカラフルメイドにメルヘンチェンジ!
 夢と希望を両耳に、ファンのために全力で頑張るから、応援よろしくねーっ!
 さぁ、いっしょにーっ! ブイッ♪」

 ライブの時間は、まさに夢中で過ぎていった。
以下略



86:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:34:27.32 ID:+iT0SMHJo

 両手を上げ、拍手を全身に浴びる。

「ありがとうございましたー!」

以下略



87:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:35:01.90 ID:+iT0SMHJo
「ナナさん」

 薄暗い中からプロデューサーさんの声がする。
 照明の当たるステージと違って、この舞台裏は隙間明かりの他になにもない。
 私は慎重に彼のほうへと歩いて、ようやく彼の手を掴まえた。
以下略



88:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:35:27.33 ID:+iT0SMHJo
「プロデューサーさん……笑ってる」

「あは……不気味だから笑うな、って言われたこともあるんですけれど」

 プロデューサーさんは照れくさそうに言った。
以下略



89:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:35:54.84 ID:+iT0SMHJo
 少しのあいだ、二人でステージから漏れてくるアイドルソングを聴きながら、薄暗がりの温かさに身を委ねていた。

「ところで、ナナさん。僕は話しておかなければ、いけないことがあります」

 そう言うプロデューサーさんは笑顔を崩さなかったけれど、表情にどこか悲しい色を混ぜていた。
以下略



90:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 19:36:22.89 ID:+iT0SMHJo
「いえ、プロデューサー業は継続して行いますから、記憶は消去されません。
 バックアップを取って、解析したのちアップグレードするんです」

「それじゃ、問題はないんじゃないですか?」

以下略



111Res/57.64 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice