過去ログ - 綾瀬穂乃香「もし柚ちゃんのプロデューサーが加蓮ちゃんだったなら」
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330:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:02:13.62 ID:oyrpMvNz0
「だから、そんな人達へのお礼ってことで! いつもと違う柚を見せたげるっ。あと1曲だけ聞いてって! さっきのとはぜんぜん違う歌だけど、アタシ、頑張って歌うから! だから……えっと、聞いてっ?」

お願いーっ、と付け加えた言葉に、数テンポの遅れを見せ、まずはLIVE慣れしているであろう野太い声達が「いいよー!」と揃って叫ぶ。周りの人たちも、同意するように拍手で続いた。
あはっ、と柚が笑った。僅かな不安がすっと消え、マイクから数歩下がる。
それが合図となり忍さんと穂乃香さん、それにバックダンサーの人たちが動き出した。
以下略



331:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:02:44.05 ID:oyrpMvNz0
何を歌うのか、私にも全く知らされていない。事前にレッスンを重ねてきた歌はすべて歌いきった。じゃあ、何をやるのだろう――
疑問混じりの期待と、それから不安。ぐちゃぐちゃになって、始まるまで瞬きができなかった。
そして――

そして、どこかで聞いたことのあるメロディが流れ始めた。
以下略



332:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:03:13.51 ID:oyrpMvNz0



――〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜〜♪

以下略



333:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:03:43.88 ID:oyrpMvNz0
――あの時の靴も言葉も 大事にしまってあるよ

初めて自分の歌をもらえて、すごく嬉しかった。加蓮にぴったりの歌だぞ! と嬉しげに言うPさんと、子供みたいにはしゃいでたんだっけ。
何度も何度も、夜遅くまで練習したんだ。体力のコントロールなんて忘れて、身体の異変にも気付かなくて。

以下略



334:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:04:15.16 ID:oyrpMvNz0
――神様がくれた 時間は零れる あとどれくらいかな


「この歌な、最初に歌いたいって言ったの、柚ちゃんだったんだ」

以下略



335:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:04:43.83 ID:oyrpMvNz0
――でもゆっくりでいいんだ きみの声が響く


「それでも思い出して欲しいってさ。思い出して、またアイドルをやって欲しいって……柚ちゃん、言ってたぞ」

以下略



336:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:05:13.50 ID:oyrpMvNz0
「加蓮だってよく言うだろ? やりたいようにやれって。前は……悪かった。やるなってばっかり言って、すまなかった」

「…………」

「今は――少しでも思い出したら……俺も、それから柚ちゃんも。加蓮が言い出すのを待ってるからな。……はは、無理強いなんて遠慮するなよ? 16歳をプロデューサー代理にすることよりはよっぽど簡単だよ」
以下略



337:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:05:43.71 ID:oyrpMvNz0
柚が、歌っている。つい10分前まで弾ける笑顔だった少女が、柔らかな笑顔で奏でるバラード。まるでキャラじゃないけれど、でも、先ほどとは違う意味で完成された舞台だった。
客席はうっとりと見惚れていた。
泣いている人もいた。

……サプライズも、そうだけど。柚のこんな姿なんて一度も見たことがない。
以下略



338:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:06:13.63 ID:oyrpMvNz0
「あ、俺はトレーナーさんに依頼出して報告を聞いてただけだぞ。柚ちゃんの担当は加蓮だからな。やり過ぎるとお前、絶対にむくれるだろ」

「…………」


以下略



339:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:06:43.83 ID:oyrpMvNz0
柚はそんな子だし、欠点を指摘して疲れさせるのも嫌だったから、今までずっと柚に向いた仕事を選んできていた。
そんな柚が。
明らかに得意分野とは異なる私の歌を、これほどまでに完璧に仕上げるまで。
どれくらいの――

以下略



340:名無しNIPPER[saga]
2015/11/29(日) 17:07:13.59 ID:oyrpMvNz0
まだまだこれからだ。この世界には、アイドルの世界には私の知らないことがいっぱいある。狭い世界の話だけで終わらせようなんて馬鹿げているにも程がある。
それに……私は約束したんだ。
病気を治して、一緒にアイドルをやろうって。

一筋だけ流れた涙を、強引に拭った。2番を歌い出した柚に、大きく首を縦に振る。
以下略



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