過去ログ - やすな「やらないとこっちから噛むぞおおおお」
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10:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:39:27.99 ID:T0P1NCyF0
またしても様々蹴飛ばしそうになる衝動を堪えながら物々の山を目でなぞっていると、銀の棚々の隙間に不似合いな木目が見えた。
なんとか隙間から手を伸ばし引き抜くと、その木目は取っての付いた箱であり、金具の付いた前面には赤い十字が描かれていた。

「それって」

以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:40:00.35 ID:T0P1NCyF0
「少し、しみるぞ」

私は消毒液のスプレーヘッドもろとも外し、液体としてやすなの傷口に振り掛けていく。

「……っ」
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:40:33.28 ID:T0P1NCyF0
「ごめんね。迷惑掛けちゃって」
「……そうだな」

普段と変わらないやすなの声。ある種の鬱陶しさを含んだ黄色い声。
この薄暗い部屋にはひどく場違いで、くすんだ白い壁紙に吸収されることなく、部屋を転々と反響しているように聞こえた。
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:41:14.50 ID:T0P1NCyF0
「今更だな。お前と居ると散々な目に遭うのはいつものことだ」

私はやすなの視線を受け止めることが出来ず、顔を逸らした。
それでも錆び付く喉を必死にこじ開けて、言葉を続けた。

以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:41:43.71 ID:T0P1NCyF0
そんなことない、気のせいだ。普段の台詞が出て来ない。ソーニャちゃんとしての言葉が、出て来なかった。
やすながそっと私の手を握った。

「楽しかったよ。ソーニャちゃんと一緒に居られて本当に楽しかった」
「口を開くな。喋ると無駄に」
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:42:25.29 ID:T0P1NCyF0
胸がはち切れそうになった私は、やすなに顔も向けもせずに叫んだ。
やすなのとは違って、私の声は壁の汚れや煤けに溶けていく。
まるで水中から太陽を羨む様に、私の声は沈んでいった。

「やっぱりずるいよね。私だけなんて」
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:43:19.80 ID:T0P1NCyF0
それから数分。いや、数十分かもしれない。
短くも永い間、私達は座っていた。
私達はただ居るだけ。どちらともなく私達は手を握り続けて、お互いの体温を感じていた。

そこにあるのは他愛もない普段と変わらぬ会話。
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:43:55.86 ID:T0P1NCyF0
「なんかお腹すいてきちゃった」
「そんな話してたら自業自得だろ」
「ステーキが食べたい。ソーニャちゃんのおごりで」
「なんで私が」

以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:44:37.06 ID:T0P1NCyF0
「今」
「どうやって」
「い、今がいい」

「やすな?」
以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:45:04.12 ID:T0P1NCyF0
普段通りやすなの手首を外しても良かったが、今はとてもそんな気分ではない。

これで良い。これで良いんだ。

首元に焼け付く様な熱が走る。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:45:45.98 ID:T0P1NCyF0
私はそれを引き剥がすと、流れるように弾丸を撃ち込んだ。

震える身体だろうが、視界がぼやけていようが、私は最期まで殺し屋だった。

きっと今回だけ。今回だけなら、やすなだって喜んでくれたはずだ。
以下略



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