過去ログ - 渋谷凛「花屋の前に……カエル?」
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12: ◆Vq2Qo.DUCLbr[sage]
2015/12/09(水) 00:26:43.20 ID:bF+qLvJro
そもそものきっかけは、自分が体調を崩したせいで、渡辺みのりが仕事を代わってくれることになったからだった。
みのりは上手くこなしてくれたものの、スケジュールに微妙に狂いが生じ、315プロデューサーが調整するも数日では戻せず、結果。
みのり「ああもったいないもったいない、苦労してやっとチケット手に入ったのになぁ。
恭二、元気になったんなら代わりに行ってくれないかい?」
自分のことで精一杯で、他のアイドルには、まして女性アイドルのライブに興味はもてなかった恭二。
だが、迷惑をかけた上に、せっかくだから自分の代わりに行って来たらどうだい?と計らいを無碍にする気もしなかった。一晩でライブに必要な知識をしっかり詰め込まれて、眠気を堪えて気乗りしないまま到着する。
そこで、彼は、見た。
最初、ステージになぜか学校の制服で登場したアイドルを見て、怪訝に思う。
特に気になったのは、そのアイドルの俯き沈んだ顔と、拠り所を懸命に探してるかのような雰囲気。
制服のポケットに、指先を触れさせると、様子が一変した。
自分の名前を告げ、この時はっきりと覚えた、頑張りますを合図に始まるステージ。
彼は、見た。
最初こそぎこちなく始められた歌とダンス。
だが進むほどに、輝きが増す。アイドルとして加速していく。
圧巻は、彼女が笑顔を浮かべ魅せはじめた時から。否、あれは取り戻したという表現が不思議としっくりきた。
目が離せなくなる。 演出の桜が吹雪く中、感極まってあふれた涙と、活力を与えてくれる笑顔から。
瞼の裏に焼きついた笑顔を浮かべながら帰路につき、らしくないと思いながらも、気持ち冷めない内にみのりに礼を言おうと電話をかけた。
みのり「いいステージだったんだね?
ああこちらのことは気にしなくていい。それはきっと恭二に必要だったんだよ」
その代わりいつか埋め合わせはしてよと言ったみのりに苦笑いしながら、恭二は思った。
例えアクシデントがあっても、あのみのりが、楽しみにしていたライブへ行くためのスケジュール調整に失敗するだろうか?
疑問を追及する代わりにもう一度礼を言って、電話を切る。
冬の夜の風に、白い息を吐くが、不思議と寒さは感じなかった。
そうか、と気付く。 熱の理由。 自分は『感動』したのだ。
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