14:名無しNIPPER[saga]
2015/12/10(木) 00:48:42.77 ID:6wSbO7neo
「まず事件の概要を思い出してくれ。一つ目は必ず水曜日にイジメが起きる」
「………」
「次にポイントとなるのは事件が起きた場所だ。雪ノ下、事件の起きた場所を具体的に思い出してみくれ」
「校庭、更衣室、トイレ、教室、盗撮の件に関しては例外的に更衣室……でいいのかしら。あとは更降口ね」
「そこから更に具体性を割り出せる場所はあるか?」
少し考えるようにしてから雪ノ下は答えた。
「……更衣室のロッカー、教室の机、下駄箱ね」
「そうだ。整理するとこの事件は水曜日に事件が起きた後、必ず相次いで校内で唯一のプライベートスペースで被害が起きている。由比ヶ浜、更衣室のロッカーと机中、下駄箱以外に、お前が校内で私物をしまう所はどこだ?」
突然の質問に由比ヶ浜は混乱した様子だった。
「うーん。部室…?」
いや………部室は私物を置いちゃダメだからね。
目の前に顧問の先生もいるからね………。
「他にもあるだろ?」
少し悩むようにしてから由比ヶ浜は答えを導いた。
「あ!わかった!教室の個人ロッカー!!」
「そう。正解だ」
教室の後ろ側に設けられたスペース。
ロッカーというにはセキュリティに欠けるが、机には入りきらない、教材や備品をしまうあれだ。
「つまり明日の水曜日、犯行が行われる場所は教室の個人ロッカーである可能性が高い」
「なるほどね……そこで犯人を捕まえるということね。けれどずっとその場で見張ることは不可能でしょう?いつ犯行が行われるかわからないわ」
「犯行が行われるのは放課後だ」
「……どういうこと?説明してくれるかしら」
「教室で犯行を行うには、人気のない時間を狙うしかない。教室が完全に空になるのは、移動教室か放課後のみだ。F組のクラスでは明日移動教室の授業はない。体育はあるが、体育の時間は男子が更衣室代わりに利用するからな。だから明日、教室が完全に空になる放課後に、個人ロッカーが狙われる」
「………」
「だから明日の放課後、教室内のどこかに身を潜めておき、ロッカー付近で怪しい動きがあれば、飛び出して犯人を捕まえる」
俺がそう言い切った後、しばらく部室内に無言が続き、雪ノ下が口を開いた。
「呆れたわ。犯罪者の思考は犯罪者が理解するというけれど、それは真実のようね」
犯罪者呼ばわりされるのは心外だ。
せめてサイコパスと呼んでくれ。
なんか語呂がカッコいいだろ。
「平塚先生、比企谷くんの案、いかがでしょうか?」
雪ノ下が平塚先生に問いかける。
どうやら雪ノ下は俺の提案に納得したようだ。
「うむ……いいだろ。明日の比企谷の案を実行しよう。あまり教師としては賛同できない方法だがな」
平塚先生も懸念点があるようだが、承諾してくれたようだ。
しかしそれは当然だ。
何故なら先生本人が依頼したことなのだから。
「なら決まりだな。明日実行に移す。但しこの策を行うのは俺と平塚先生の二人で行いたい。大人数では行動しにくいし、何より全員で実行する意味がそもそもない。雪ノ下、由比ヶ浜それでも構わないか?」
「わかったわ。平塚先生が居るなら安心ね。あなた一人だとまた勝手な事をやりかねないもの」
「うん。そうだね!ヒッキー頑張って犯人を捕まえてね!」
二人から了承を得て、平塚先生にも目を向け確認を取る。
「わかった。私もそれで異論はない」
最後に平塚先生の同意を得て話は纏まりを示し、先生は職員室に戻り、残りの時間は通常通りの部活を行った。
メールでの依頼をこなし、雪ノ下と由比ヶ浜が談笑する。
その隣で俺は読書をして過ごした。
だが俺は実のところ明日の事を考えると、本の内容など頭に入らなかった。
何故ならーーー。
何故ならそれは、明日の放課後、教室にイジメを行った犯人など現れないからだ。
30Res/39.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。