203: ◆pOKsi7gf8c[saga]
2016/01/10(日) 23:52:20.92 ID:wg8tf7a50
<護衛艦 甲板>
ザバッ サバッ
艇体に打ち付ける波がはじけ、子気味良い音を立てている
波を切って進む船には海風がそよぎ、甲板に立っている自分の顔を撫でていた
「良い風だ」
風に混じった潮の香りを感じながら、久々の船出に想いを馳せる
思えば、体感時間でふた月、実際の時間で数十年は海に出ていなかったことになる
海軍に入隊してから船に乗らない日が無かったことを考えると、何ともおかしな話である
(……懐かしいな)
風で押し進められた波が船体を押し、体が揺さぶられる
船酔いの原因になるそれは訓練生時代から体に覚え込まされたものであり、旧い知り合いにあったような懐かしさを覚える
だが、それは同時に、抑えていたはずの記憶を揺さぶり起こす
(下山田、みんな……)
瞼の裏に焼きついたあの光景が蘇る
滅茶苦茶に破壊された主砲、割れ窓から赤い火を覗かせる艦橋、バラバラに吹き飛ばされた戦友
その光景の1つひとつが、この船の甲板に被って見えた
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