230: ◆pOKsi7gf8c[saga]
2016/01/16(土) 00:08:32.63 ID:+irLAoS/0
どれくらいの間声を張り上げていたのか分からない
気が付けば、空気で満たされていた肺は萎み、荒い呼吸で酸素を取り込んでいた
その間も艦長は微動だにせず、俯いたまま一点を見つめている
艦橋の他の船員たちも聞き耳を立てながら、じっとそのその様子を窺っている
船外の喧騒とは対照的に、艦橋には奇妙な沈黙が垂れ込める
「艦長」
だが、それも束の間、艦長の名を呼ぶ声によって沈黙は破られた
艦橋の皆の視線が一斉にその声のした方向へと移る
「自分は引き返すべきだと思います」
そこには舵輪を片手で操り、こちらを振り向く井上の姿があった
「井上、何を……」
突然の申し出に驚いた艦長は俯いていた顔を上げ、彼の名を呼ぶ
露わになった顔には驚愕の色が見て取れた
「君嶋少尉の言うとおりです」
「自分たちだけ逃げられません」
そんな様子の艦長には目もくれず、井上は先を続ける
彼の目には、何者にも侵されない確固たる意志の煌めきが灯っていた
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