544: ◆pOKsi7gf8c[saga]
2016/06/18(土) 22:04:50.79 ID:urIs08YJ0
打ち上げられた水柱が立ち消え、再び煙幕が敵を覆い隠す
だが、今回は薄らと海を灰色に染めるのみで視界を完全になくすほどではない
試作段階のミサイルにもムラがあるのだろう、今のは炸薬の調整が当たりだったようだ
立ち上った爆炎は海風にさらわれ、みるみる薄くなっていく
「大久保……」
薄いグレーに隠された水面を臨んで、観測手の名を呼ぶ
その声に我に返った大久保は、呆然と目の前を見つめていた視線を手元の計器へ戻す
そして、慌ただしく表示された情報を読み上げる
「レーダーサイトに反応……ありません」
艦橋にいる水兵たちが皆、聞き耳を立てる
誰が言うでもなく、この報告で勝負が決まると理解していた
通信盤の前に座る小林は耳あてを耳から外し、舵輪を握りしめる井上は正面を向いたまま静止し、通信機を手にした自分は観測手の背中を見つめる
周りの関心を一身に受ける観測手は、その左手に掴んでいた双眼鏡を目に当て、敵がいた海域をくまなく探す
立ちこめていた煙が風に乗ってすっかり薄くなった頃、
「敵影……完全に消失」
「敵深海棲艦、撃沈しました」
索敵の結果を報告する
大久保の報告に耳をそば立てていた兵士たちは、その言葉に聞いても尚、その場に立ち尽くしている
戦闘で極限まで張りつめていた緊張が消え、皆どうすればいいのか分からないといった様子だった
自分も例外ではなく、既に敵影がなくなった海面を眺め続けていた
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