13: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:06:20.07 ID:wxXgwuIMo
「穂乃果は、アイドル続けようとは思わなかったの?」
穂乃果がスクールアイドルを引退してから、ずっと気になっていたことを口にする。
穂乃果は自身の進路についてほとんど口にしなかった。いつも能天気に振舞って、だけど準備だけはしていて。
大学に行くと知ったのも、センター試験の直前だった。私たちが聞いていたのは進学するとだけ。どこに行くのか、なんてのはことりも海未も知らなかったらしい。
「思わないこともなかったよ? 大学行きながらでも、アイドルやらないかってにこちゃんにも誘われたし」
「じゃあ、どうして」
「んー……。アメリカに行ったときのこと覚えてる? 私が迷子になったとき」
「覚えてるけど。それがどうかしたの?」
地下鉄で、穂乃果が上りと下りを間違えて一人はぐれてしまったときのことか。
よく覚えている。海未が酷くうろたえていたことばかりが印象に残っているが、あの時は皆不安を抱えていた。
見知らぬ土地で迷子。心配しないはずがない。
「あの時ね、日本人の女性に出会ったの。その人は路上で歌ってたんだけど、凄い上手だった」
「それで、自分もそういうことしてみようって?」
「きっかけはそうかな。でも、なんていうか、自分一人でどこまでやれるのか、試してみたくなったの」
「自分一人で……」
思ってもみないことば。穂乃果が一人で、というのは違和感を覚えずにはいられない。
穂乃果はいつだって誰かと一緒だった。一緒にやろうと誘うタイプの人間で、同時に誘われる気質を持った人間だったから。
手を貸してあげたくなる人。応援したくなる人。穂乃果は、放って置かれることがない人なのだ。
かつて、私が曲を提供したように。
同時に、人を巻き込んでいく人だ。誰彼構わず手を取って、引っ張っていく人。
かつて、穂乃果が私にそうしたように。
63Res/47.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。