22: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:14:12.87 ID:wxXgwuIMo
「穂むらを継ぐのも、考えなかったわけじゃないよ。長女だし、継ぎたくないわけじゃなかったしね」
「じゃあ、どうして?」
「私は何をしたいんだろうって考えたときに、一番に思い浮かばなかったんだよね。穂むらを継ぐのもありだなぁとは思ったけどね」
「何をしたいか……」
結局、それか。私のしたいこと。なってもいい、ではなく、なりたいもの。
簡単にわかったら苦労しない。わからないから、こんなにも悩んでいる。
「真姫ちゃんは、何がしたいのかわからない?」
「……うん」
「まだわからなくても、いいと思うよ。ほら、真姫ちゃんまだ高校生だし」
高校生だから、と甘え続けてきた結果が今だ。
その言葉には頷けない。
「それに、最悪うちに来ればいいよ。何になりたいのかわからなくて、答えが出ないまま手遅れになっちゃったら。そしたら、わたしと一緒に穂むらで働けば
いいんだよ」
「……あなたは、それでいいの?」
「なりたいものになれる、なんて言い切れないからね。失敗してどうにもならなくなっちゃったら、穂むらを継ぐしかないし」
「私だけが失敗するかもしれないじゃない」
「そうなっても、一緒にやればいいよ。ほら、穂むらをやりながらでもできることはあるし」
「……なら、失敗するわけにはいかないわね」
穂乃果は優しい。私が迷っている時に、こうして手を差し伸べてくれる。助けてくれる。
でも、その手を取るわけにはいかない。その手を取ってしまったら、私は二度と自分で歩けなくなる。
確信がある。
私は子供で、弱いから。きっとその手にすがってしまうだろう。
音楽を続けて欲しいと、そう言わないのは彼女なりの温情だろうか。
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