過去ログ - 真姫「歩き方を教えて」
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6: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:01:56.74 ID:wxXgwuIMo
「そうだねぇ。練習はずっとしてたよ」

 もそり、とジャムとバターの乗ったトーストをかじる。口内にわずかなしょっぱさとイチゴの甘味が広がっていく。

 やはり穂乃果は、独学で練習していたようだ。独学、といっても今の時代ある程度の情報は手に入る。変な癖もついていないようだったし、ちゃんとした練習を積んだのだろう。

「でも、作曲を始めたのは最近かな。一人暮らしも余裕出てきたし」

「……アーティストでも目指してるの?」

 穂乃果は卒業後、普通に大学へ進学した。ことりと海未も、それぞれの道へ進んだ。三人ともアイドルプロダクションからスカウトが来ていたが、誰も受けなかった。

 アイドルをやればよかったのではないか、と思うこともある。そうすれば、作曲だってよい講師が得られたはずだ。

 それがわからないほど、穂乃果は馬鹿じゃない。というか穂乃果は勉強ができないだけで地頭が悪いというわけではないのだ。私とは正反対に。

「んー……。そうなる、のかなあ? 私はとりあえず歌いたいって思ってるけど、テレビに出たいとか、CDを出したいってわけじゃないし。たくさんの人に歌を聞いてもらえるのはいいと思うけど」

 穂乃果は歌うのが好きだ。傍目から見ている分にも、随分と楽しそうに歌う。そして真剣だ。

 なるほど。アイドルとは程遠い。

 穂乃果は結局のところ自分本位だ。なによりも、自分がしたいことを為す。誰かの為に在るアイドルとは真逆に位置している。

 不思議な話だ。かつて誰よりもアイドルだった穂乃果が、今はアイドルから遠く離れたところにいる。それでいて、彼女はアイドルのままなにも変わっていない。

「最近は駅前で歌ったりしてるんだ。興味持ってくれる人は、少ないけどね」

「へぇ。許可とかいるんじゃないの?」

「さぁ?」

「……いい加減ね」

 どこまでも、穂乃果らしい。


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